凛冽りんれつ)” の例文
雪をはらんだ凛冽りんれつたる風が颯と一陣吹いて来た、対岸の山の中腹から、濛々もうもうたる吹雪ふぶきが渦を捲いて、竜巻のように空へ昇ると
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
凛冽りんれつという文字のぴたりはまるもので、皮膚をさき骨をさすかと思った。さっきまでは登っていさえすれば温かかった。
新潮記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
凛冽りんれつたる開拓の意志が、目下の、腹にこたえるさまざまな感情を殺さねばならぬと思うのだ。他日計画の成ったとき、今日の冷酷さを思い描いて歓びを感ずるために。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
オペラは欧洲の本土に在っては風雪もっとも凛冽りんれつなる冬季にのみ興行せられるのが例である。それ故わたくしの西洋音楽を聴いて直に想い起すものは、深夜の燈火に照された雪中街衢がいくの光景であった。
帝国劇場のオペラ (新字新仮名) / 永井荷風(著)
雪は小止みにはなったけれど嵐はいよいよ勢いを加え、横撲よこなぐりに襲って来る。寒気は文字通り凛冽りんれつである。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
江戸には霜月までいたが、「どんな幸運でも転げている」といわれるのに反して、それまでの何処よりも生活は厳しく、田舎から出た者には人情も風も凛冽りんれつだった。
足軽奉公 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
この山国の冬の初め、寒風凛冽りんれつと吹く中を単衣ひとえさえ纏わぬ勇気あればこそ病魔も恐れて立ち去ったのじゃ。武兵衛における赤裸はその方達における鎧冑、すなわち身を守る道具なのじゃ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)