兀立こつりつ)” の例文
しかし私をのけぞる程駭かしたものは、雲の厚襖を突き破って兀立こつりつした北岳のいただきであった。北から西からのしかかるように盛り上った頂線は、力余って東の方に倒れんとしている。
木曽駒と甲斐駒 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
残るくまなく雲の波にひたされて、四面圜海くわんかいの中、兀立こつりつするは我微躯びくを載せたるはう幾十尺の不二頂上の一撮土さつどのみ、このとき白星をふくめる波頭に、漂ふ不二は、一片石よりも軽かつ小なり
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
甲州は今雪の王国に御座候、四囲の山々、皆雪白、地蔵鳳凰の兀立こつりつ、殊に興趣あり、また雪ある山々の、相互の陰翳、頗る面白く候、東の方の山々の中、夕日の加減にて、或山のみ常は凡々たるが
雪の白峰 (新字新仮名) / 小島烏水(著)