偏寄かたよ)” の例文
それはたしかに偏寄かたよった癖かもしれないが、とにかく、僕には、たった一遍、一生涯忘れられないほどの愉快な航海があった。
その上に場所が偏寄かたよっていた。浅草公園はその頃も繁昌していたには相違なかったが、決して今日のようなものではなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この偏寄かたよった下層興味にしばしば誤まられて、例えば婦人を観察するにあたっても、英語の出来るお嬢さんや女学校出の若い奥さんは人形同様で何の役にも立たないと頭からけなしつけ
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
第二の夢の世界は、前の天竺よりはずっと北へ偏寄かたよっているらしく、大陸の寒い風にまき上げられる一面の砂煙りが、うす暗い空をさらに黄色くくもらせていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
場所が少し偏寄かたよっているので、ふだんはあまり参詣もないようですが、九月十九日の大祭のときには近郷近在から参詣人が群集して、なかなか繁昌したそうです。
半七捕物帳:50 正雪の絵馬 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
江戸が東京と改まりしに就ては、劇場が浅草のごとき偏寄かたよりたる場所にあるは不利益と観て、市の中央たる京橋に打って出づることを企てしは、守田勘弥の慧眼というべし。
明治演劇年表 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)