倶不戴天ぐふたいてん)” の例文
井伊と吉田、五十年前にはたがい倶不戴天ぐふたいてんの仇敵で、安政の大獄たいごくに井伊が吉田の首を斬れば、桜田の雪を紅に染めて、井伊が浪士に殺される。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
倶不戴天ぐふたいてんの親のあだ、たまさか見付けて討たんとせしに、その仇は取り逃がし、あまつさへその身は僅少わずかの罪に縛められて邪見のしもとうくる悲しさ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
倶不戴天ぐふたいてんの敵なりとして続けられ、何月何日、某処に会合したその一人は既に斯の如き自白をして、汝もその時斯の如き言動をしたに相違がないと、其者は立派に陳述して居るではないか。
逆徒 (新字旧仮名) / 平出修(著)
彼の聴水が所業しわざなること、目前まのあたり見て知りしかば、いかにも無念さやるせなく。ことにはかれは黄金丸が、倶不戴天ぐふたいてんあだなれば、意恨はかの事のみにあらず。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
... さるに怎麼いかなればかく、おぞくも足をやぶられ給ひし」ト、いぶかり問へば黄金丸は、「これには深き仔細しさいあり。原来某は、彼の金眸と聴水を、倶不戴天ぐふたいてんあだねらふて、常に油断ゆだんなかりしが。 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)