侘住わびずま)” の例文
丘麓の片側町三十何戸は半数まで陸軍将校の侘住わびずまいである。そうしてそれが大抵中佐か大佐の恩給取りだ。
閣下 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
まだ新嫁にいよめでいらしッたころ、一人の緑子みどりご形見かたみに残して、契合ちぎりあった夫が世をお去りなすったので、あとに一人さびしく侘住わびずまいをして、いらっしゃった事があったそうです。
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
蕪村の句には、こうした裏町の風物を叙したものが特に多く、かつおおむすぐれている。それは多分、蕪村自身が窮乏しており、終年裏町の侘住わびずまいをしていたためであろう。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
猿寺の侘住わびずまいに遷った香以は、山城河岸の店から受ける為送しおくりの補足を売文の一途に求めた。河竹新七の紹介に由って、市村座の作者になり、番附に梅阿弥の名を列する。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「そうなれば、無論、田舎の侘住わびずまいも、これでなかなか面白いものでしょうがね。ところが、そんな話し相手が頓とないのです……。で、時々*1『祖国の子』を読むぐらいが関の山ですよ。」