“併(シカ)” の例文
ぢやが、大織冠(タイシヨククワン)さまの代どころでは、ありは致しませぬ。淡海公(タンカイコウ)の時も、まだ一流れのお家でおざりました。併(シカ)し其頃(ソノコロ)やはり、藤原は、中臣と二つの筋に岐(ワカ)れました。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
闇(クラ)い空間は、明りのやうなものを漂(タダヨハ)してゐた。併(シカ)し其は、蒼黒(アヲグロ)い靄(モヤ)の如く、たなびくものであつた。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
郎女(イラツメ)が、筆をおいて、にこやかな笑(ヱマ)ひを、円(マロ)く跪坐(ツイヰ)る此人々の背におとしながら、のどかに併(シカ)し、音もなく、山田の廬堂を立ち去つた刹那、心づく者は一人もなかつたのである。
死者の書 (新字旧仮名) / 折口信夫(著)