併行へいこう)” の例文
濠はそれに併行へいこうして、幅は二間をこえ、通例のもの以上築土も高い。いわゆる町の城廓のそれとなき様式をこの本山日蓮宗八ぽんの寺域もまた踏襲とうしゅうしていた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
怪塔ロケットと偵察機とは、いままさに併行へいこうして高度すでに一万メートルにちかい高空をとんでいきます。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もしこの内職がある程度まで併行へいこうしていなければ、この種の叙述の価値は大分減じます。大学の教授が私立大学をやめると収入がよほど違うようなものであります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は立ち尽したまま、いつまでもまじわることのない、併行へいこうした考えで頭の中が一杯になっていた。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
現にそういう重々しい節の日と併行へいこうして、民間にも数々のセチビが認められていた。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
『女大学』をも大抵の処まではこれをつぶさずして、かえって男子をしてこの『女大学』の主義に従わしめ、以て男子の品行をただして双方を併行へいこうの点に維持せんとするにあるものなり。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
攻城、野戦の陣頭には、英才雄才、あらゆる人材が参与さんよしているが——それと併行へいこうしてより以上にも重要な軍費財務の方面には、ほとんど進んで当ろうという偉才がない。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高きものあればこそ低きものもあり、強大あればこそ小弱もあり。故に今、婦人の地位を低しというも、男子の地位を引下げて併行へいこうするに至らしむれば、男女の権力平等なりというべし。
日本男子論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
だが、私は同時に、これと併行へいこうした外の考え方もしていた。
淫売婦 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)