何処どこか)” の例文
旧字:何處
或る日私はね、揺籠ゆりかごに乗ったままお庭の何処どこかへ置かれていたのよ。私の頭の上には広い広い青い幕が丸く一ぱいに広がっていたのよ。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
運動場に敷く小砂利こじゃりのことまで考えだし、頭はぐらぐらして気は遠くなり、それでいて神経は何処どこか焦焦じりじりした気味がある……
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
蛇教えのままに身を伸ばして官道に横たわり居ると、棒持った人が来て蛇を見付けると同時に烈しくその頭を打ったので、蛇の頭痛はまるで何処どこかへ飛んでしまった。
胸の何処どこかに潜み、心の何処にかくれたか、翼なく嘴なく、色なく影なき話の種子は、小机からも、硯からも、その形をあらわさなかった、まるで消えたように忘れていた。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いいえ、僕知っているもんですか。ポチですよ。ポチが悪いのです。僕が此間ポチに写真を喰べさせたら、ポチがくわえて表へ持って行ったんです。きっと何処どこかへ落して来たんです。真正ほんとうに困る奴だ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)