住心地すみごこち)” の例文
五年まえからこの大楠村に洋館の住心地すみごこちの宜い家を建て、料理人と下男二人だけを使って気楽な余生を送っている。
天狗岩の殺人魔 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「こうしてみると、なかなか住心地すみごこちがいい」と父親は長火鉢の前で茶を飲みながら言った。車力は庭の縁側に並んで、振舞ふるまわれた蕎麦をズルズルすすった。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
村に生まれて萱葺きの家にそだった者は、年を取ると、みょうにこの住心地すみごこちの恋しくなるものである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
いえいえ、旅もようございましょうが、江戸の住心地すみごこちも捨てたものではございません。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
げに山の手は十一月十二月かけての折ほど忘れがたく住心地すみごこちよき時はなきぞかし。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ハムレット太子たいしの故郷、ヘルジンギヨオルから、スウェエデンの海岸まで、さっぱりした、住心地すみごこちさそうな田舎家いなかやが、帯のように続いていて、それが田畑の緑にうずもれて、夢を見るように
冬の王 (新字新仮名) / ハンス・ランド(著)
建物の大きさからいっても、住心地すみごこちの上からいっても、また保存年限の長さから見ても、こういうのは、もうけっして苅穂かりほのいほではない。屑屋くずやどころか材料にえらい費用がかかっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
無事の日にはこころよい住心地すみごこちと、たのしい安全感とをあたえるような住宅の群れを作りあげて、いよいよわたしたちの愛惜あいせきの念を、深くかつ切なるものにし得るかを考えなければならぬ。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)