伝馬役てんまやく)” の例文
ある伝馬役てんまやくの門口にも立って見た。街道に添う石垣の片すみによせて、大きなたらいが持ち出してある。馬の行水ぎょうずいもはじまっている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そのほうの下役、仙波阿古十郎というは、まことに奇妙なやつの。もと甲府勤番の伝馬役てんまやくであったと申すが、なにしろ、ふしぎな理才を持っておるよし」
顎十郎捕物帳:09 丹頂の鶴 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それから、宿しゅく伝馬役てんまやくと在の助郷すけごうとはわけが違う、半蔵さまはもっと宿の伝馬役をいばらせてくだすってもいい。そういうことを言うんです。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
宿場らしい高札こうさつの立つところを中心に、本陣ほんじん問屋といや年寄としより伝馬役てんまやく定歩行役じょうほこうやく水役みずやく七里役しちりやく(飛脚)などより成る百軒ばかりの家々がおもな部分で
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
伝馬役てんまやくは給金を増せと言い出して来る。どうしても問屋場に無理ができるんです。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
冬春の雪道、あるいは凍り道などのおりはことに荷物の運搬も困難で、宿方役人どもをはじめ、伝馬役てんまやく、歩行役、七里役等の辛労は言葉にも尽くされないもののあることを思い出した。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)