仮綴かりと)” の例文
彼はその仮綴かりとぢの処女詩集に『夢みつつ』と言ふ名前をつけた。それは巻頭の抒情詩ぢよじやうしの名前を詩集の名前に用ひたものだった。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
私の眼は、その仮綴かりとじの本の純白な西洋紙と、彼女の胸の白さとの上に、かわがわる注がれました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
(彼の詩集は幸か不幸か紙の切つてない装幀さうていだつた。)けれども滅多めつたに売れたことはなかつた。そのうちにだんだん紙も古び、仮綴かりとぢの背中もいたんで行つた。
詩集 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うすい仮綴かりとじの書物が一冊、やはり翼のように表紙を開いて、ふわりと空へ上りましたが、しばらくテエブルの上で輪を描いてから、急に頁をざわつかせると
魔術 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)