他行たぎょう)” の例文
わたくしも、ちょっと他行たぎょうをいたしまして、ただいま戻りましたところでございます。失礼をいたしました
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
物語の筋は、喜平次という男が他行たぎょうすると、野中でにわかに日が暮れる。はるか前方に人家の灯影が見えたので、それをたよりに行きついて見ると若い美しい女が一人で居る。
暴風雨の夜 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
大禄みながらなかなか勘定高うてな、この十年来、兎角お墨付をないがしろに致し、ここを通行致すみぎりも、身が他行たぎょう致しておる隙を狙うとか、乃至は夜ふけになぞこっそりと通りぬけて
法然が用事あって、他行たぎょうしているそのあとへ弘法大師から使があったという。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
徒歩かちと馬上と、かたちは主従の他行たぎょうであるが、途々みちみちのはなしは、こんなふうに、何の気ごころもけなかった。——また老公も、こういう仲に生じる心と心の春風しゅんぷうを愛するもののようであった。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ようこそじゃあねえぜ。」と伊予之進は伝法でんぽうに砕けた調子で、「久しく他行たぎょうだったじゃあねえか。」
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ちょうどあの日は、お友達が見えまして、朝から他行たぎょう致したのでございます。
墓地の殺人 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)