仏心ほとけごころ)” の例文
俺はそう呟いて、いやいや、今夜というのを延ばしただけだと俺は俺の仏心ほとけごころを押しつぶした。今夜はカンベンしてやろう。今夜だけ見のがしてやる。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
「その狂人の人鬼ひとおにでも、この可愛い子供を見たら、——この子供はずいぶん可愛いわね——殺生の気持ちなどなくなしてしまって、仏心ほとけごころになるだろうよ」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お延は妖婦に似もやらず、いつにない仏心ほとけごころを起して、しみじみとつぶやいていた。小六はせせら笑って
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、私はお寺まいりをし、仏様を見て歩いて、仏心ほとけごころを起すのではない。でも、仏様を見ていると、不思議にいい気持がするのであった。時々は、いい気持よりまずい気持にされることもある。
冬の法隆寺詣で (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
仏心ほとけごころのある男とみえて、かたく妻にいいつけた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)