人煙じんえん)” の例文
まだその比の早稲田は、雑木林ぞうきばやしがあり、草原くさはらがあり、竹藪たけやぶがあり、水田があり、畑地はたちがあって、人煙じんえん蕭条しょうじょうとした郊外であった。
雑木林の中 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
標高は千百メートル位に過ぎないが、北海道の奥地遠く人煙じんえんを離れた十勝岳の中腹では、風のない夜は全くの沈黙と暗黒の世界である。
雪雑記 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
勿論この川筋には、さっきから全然人煙じんえんあがっている容子ようすは見えなかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
このあたり一帯、人煙じんえん稀薄きはく、枯すすきの原さえつづいているのだが、寛永寺末の、院、庵のたぐいが、所まだらに建っていて、おおかたの僧坊は、信心深そうな僧尼そうにによって住みなされていた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)