“人後(じんご)” の例文
窃(ひそか)に人後(じんご)に落ちないと思っていたが、しかしいざ筆を取って見ると文才と共に思想の足りない事を知って往々絶望していたこともあった。
正宗谷崎両氏の批評に答う (新字新仮名) / 永井荷風(著)
死せざるに勝(まさ)る恥があるということの分別はいずれも人後(じんご)に落ちないものであったから、彼等は死を争おうとも、それに異議を唱(との)うるものが一人もあるべきはずがない。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
しかも普通の落ち方ではない。遥(はる)かこなたの人後(じんご)だから心細い。葬式の赤飯に手を出し損(そくな)った時なら何とも思わないが、帝国の運命を決する活動力の断片を見損(みそこな)うのは残念である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寄席(よせ)がはねて木戸を出る時、待ち合せて電車に乗る時、人込みに切符を買う時、何でも多人数競争の折には大抵最後に取り残される、この場合にも先例に洩(も)れず首尾よく人後(じんご)に落ちた。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)