人交ひとまじわ)” の例文
高柳君は口数をきかぬ、人交ひとまじわりをせぬ、厭世家えんせいかの皮肉屋と云われた男である。中野君は鷹揚おうような、円満な、趣味に富んだ秀才である。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つまり人交ひとまじわりのできないさげすみの悲しさで、そうした侮りの待遇を受けても、自分もそれで是非ないものと思っており
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
どこかの静かな墓地の土の下にうめられて、次第に朽ちて行くのに、その土の上では何事もない日が立って行く事だろう。そして自分は生き残って、人交ひとまじわりもするだろう。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
仏蘭西フランスの小説を読むと零落おちぶれた貴族のいえに生れたものが、僅少わずかの遺産に自分の身だけはどうやらこうやら日常の衣食には事欠かぬ代り、浮世のたのしみ余所よそ人交ひとまじわりもできず
あれは人交ひとまじわりのできぬ素性の者であるに拘らず、能登守をあざむいて、その寵愛ちょうあいをほしいままにしているけがらわしい女、横着おうちゃくな女という評判が立っていることであります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)