亭主やど)” の例文
「あったって遠い身寄りは音信不通で、付合っちゃくれません。もっとも長崎には亭主やどの弟がいますが、お葬式とむらいに間に合うわけはなし」
いいえ、滅相な、お世辞ではございませんが、貴女方に誉められます処を、亡くなった亭主やどに聞かしてやりとうございます。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お倉さんは亭主やど飾屋かざりみせの株を買せるからと云い老人に大変な無心を言て来たのです、すると老人は一も二も無く跳附はねつけ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「はいはい、亭主やどは、人様が、お寝静まりになりましてから、こっそり、忍んで参りまする」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
あなたはあのほうにはお気をお留なさいませぬがと云って、袋のまゝ置てある最中を一つ取って半分にり、ほんとにあなたには亭主やどでも感心致して居りますと、こぼれた粉を払って居るに
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「あつたつて遠い身寄は音信不通で、附合つちやくれません。尤も長崎には亭主やどの弟が居ますが、お葬式とむらひに間に合ふわけはなし」
「畜生ッ、そうとは知らずに、——私は亭主やどに口止めされたのを守って、今まであの二人をかばってばかりいました、——敵を討って下さい、親分さん」
「畜生ツ、さうとは知らずに、——私は亭主やどに口止めされたのを守つて、今まであの二人をかばつてばかり居ました、——敵を討つて下さい。親分さん」
亭主やどの連れで私にはまましい仲ですよ。体が弱いくせにねたみ根性が強いから、お菊ぐらいは殺し兼ねません」
亭主やどの連れで私にはまゝしい仲ですよ。片輪者のくせにねたみ根性が強いから、お菊位は殺し兼ねません」
「どこで噂を聞いたか、今朝お二人はあわてて飛んで来ました。御近所の衆も御存じですが、何か亭主やどが預かったものがあるとか言って、仏様の懐までかき廻して行きましたが——」