二様によう)” の例文
彼女は黙って前後二様にようの自分を比較して見た。そうしてこの急劇な変化の責任者として、胸のうちで、吉川夫人の名前をかえさない訳に行かなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この願いは二様にようの意味で忠通のこころを動かした。第一は乙女の孝心に感じさせられたのと、もう一つには自分の過去に対する微かな悔み心を誘い出されたのとであった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
本年演劇珍書刊行会において翻刻せし鳥居清信が『四場居百人一首しばいひゃくにんいっしゅ』(全一冊)は元禄六年の板にして、この珍書は日本演劇ならびに浮世絵研究者に取りて二様にようの興味を感ぜしむ。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)