乗憑のりうつ)” の例文
あやしき神の御声おんこえじゃ、のりつけほうほう。(と言うままに、真先まっさきに、梟に乗憑のりうつられて、目の色あやしく、身ぶるいし、羽搏はばたきす。)
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
猫が乗憑のりうつったのかどうしたのか不思議なこともあるもんですね。それからおまきの家をあらためて見ますと、縁の下から腐った魚の骨がたくさん出ました。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
お蔦 ねえ、貴方、私やっぱり、亡くなった親のなさけが貴方に乗憑のりうつったんだろうとそう思いますわ。
湯島の境内 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鶏の料簡りょうけんは誰にも判りませんから思い思いに判断するのほかはありませんが、恐らく死んだ亭主の魂が鶏に乗憑のりうつったのでしょうと、お六は恐ろしそうに云っていました。
半七捕物帳:51 大森の鶏 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
平家のたましいが乗憑のりうつっているからは、どのようなおそろしい祟りがあろうも知れぬぞ。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
その時わたくしに魔がさしたのか、獣のたましいが乗憑のりうつったのか、自分でも夢のように雨戸をあけて、ふらふらと表へ出ました。(立ちあがる。)どこかで狼の声がつづけて聞えます。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一人ひとりならず、七人までも喰い殺しました。わたくしには獣のたましいが乗憑のりうつっているのでござります。こうして女の姿はして居りますが、わたくしの心は怖ろしい狼になって仕舞ったのでござります。
人狼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
死んだ猫の魂がおまきさんに乗憑のりうつったんでしょうかしら。
半七捕物帳:12 猫騒動 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)