不謹慎ふきんしん)” の例文
彼は目的においては誠実なり、しかれども手段においては、はなはだ術策に富み、しこうしてその術策中、不謹慎ふきんしんなるもの一にして足らず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
しかし、絵で見る天使はみんな裸体だから、あれでいっこう差閊さしつかえあるまいと彼はこの悲劇に不謹慎ふきんしんなユウモアをろうして満廷を苦笑させた。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
瑠璃子が、入って来れば、の押え切れないいきどおりを、彼女に対しても、もらそう。白痴の子をもてあそんでいるような、彼女の不謹慎ふきんしんを思い切り責めてやろう。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
僕自身が田舎いなか生まれではなはだ不謹慎ふきんしんの語を用いること多きゆえ、一層このことを感じ、また世には僕みたような人もあるだろうと思い、所感の一端を述べたのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
しからずんば不謹慎ふきんしんな冷笑であった。ただそれら現代語の詩に不満足な人たちに通じて、有力な反対の理由としたものが一つある。それは口語詩の内容が貧弱であるということであった。
弓町より (新字新仮名) / 石川啄木(著)
目的さえ正しければ、方便は問う所にあらずとの「ジェスイト」派の慣用手段は、不謹慎ふきんしんに不謹慎を増し、遂にはその目的すら教化の外に逸出し、ようやく識者のいとう所となる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)