不忍池しのばず)” の例文
と、思ううちに、いつか不忍池しのばずの前まで来ている。せいたかは池にのぞんだ小粋な蓮見茶屋の軒先へこんがらと一緒にかかって
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
本舞台へ来て見物したって、ふん、雁鴨がんかも不忍池しのばずに、何が帆を掛けてじゃい、こっちは鯨の泳ぐ大潟の万石船じゃい——何のッて言う口です。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
広津ひろつと知つたのは、廿にぢう一年の春であつたか、少年園せうねんゑん宴会ゑんくわい不忍池しのばず長酡亭ちやうだていつて、席上せきじやう相識ちかづきつたのでした、其頃そのころ博文館はくぶんくわん大和錦やまとにしきふ小説雑誌を出して
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「先頃、不忍池しのばずの蓮見茶屋の株を買い求め、不伝どのには、その女を、そこへ住まわせておるとか申す者がございます」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)