不倖ふしあわ)” の例文
わたし程、不倖ふしあわせな者はないと今日まで思っていたけれど、今夜の——たった今、わたしにも一つの倖せはあったような気がして来た。
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「美男はいいが、第一、おれのかたきは弱すぎる! あんな逃げ下手な、腕の知れた男を、仇としてもったおれは、何という不幸の上の不倖ふしあわせだろう!」
八寒道中 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「わしの願いは、中村じゅうで一番の不倖ふしあわせ者じゃった母を、日本一の幸福者にさせてお上げ申したいことだ……」
日本名婦伝:太閤夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分たち姉妹三人が、みんな不倖ふしあわせだというようなことから——始まって。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こいつが、てめえ自身の不倖ふしあわせも知らずに、俺を不愍ふびんだといやがる」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
世の中でいちばん不倖ふしあわせな人が、母の姿であるように見られた。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)