下物げぶつ)” の例文
茶山は襦袢が薄くてさぶさに耐へぬと云つて、益に繕ふことを頼んだ。又部屋の庖厨の不行届を話したので、蘭軒夫妻は下物げぶつ飯菜の幾種かをおくつた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
家にあるに手杯てさかづきかず、客至れば直に前にならべた下物げぶつを撤せしめて、新に殽核かうかくを命じた。そして吾家に冷羮残炙れいかうざんしやを供すべき賤客は無いと云つたさうである。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
例之たとへば蘭軒は酒を飲むに、しば/\青魚鮞かずのこを以て下物げぶつとした。そして青魚鮞を洗ふには、必ず榛軒の手を煩した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
八月二十二日に抽斎は常の如く晩餐ばんさんぜんに向った。しかし五百が酒をすすめた時、抽斎は下物げぶつ魚膾さしみはしくださなかった。「なぜあがらないのです」と問うと、「少し腹工合が悪いからよそう」といった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)