下島しもじま)” の例文
この日、下島しもじま先生の夫人、単身たんしん大震中の薬局に入り、薬剤の棚の倒れんとするをささふ。為めに出火のうれひなきを得たり。胆勇たんゆう、僕などの及ぶところにあらず。
伊織が金を借りた人は相番あいばん下島しもじま甚右衛門と云うものである。平生親しくはせぬが、工面くめんの好いと云うことを聞いていた。そこでこの下島に三十両借りて刀を手に入れ、拵えを直しにった。
じいさんばあさん (新字新仮名) / 森鴎外(著)
暑気はなはだし。再び鎌倉に遊ばんかなどとも思ふ。薄暮はくぼより悪寒をかん。検温器を用ふれば八度六分の熱あり。下島しもじま先生の来診らいしんを乞ふ。流行性感冒のよし。母、伯母をば、妻、児等こら、皆多少風邪ふうじやの気味あり。