七葉樹とち)” の例文
何故かと申しますなら、あの周囲ぐるりにある七葉樹とちの茂みの中には、電鈴を鳴らす開閉器スイッチが隠されているからでございます。するとどうでございましたろう。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
片側道一杯に、日覆いになるほどに、のさばっている七葉樹とちやで、谷はだんだん暗くなる、その木の下闇を白く抜いて、水は蒼暗い葉のトンネルを潜って、石を噛んでは音を立てる、小さな泡が
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
助七によると、この辺は「馬のコヌカミ」という処だそうな。下りになって、南平ミナミダイラは小黒部の河原に近く、ぶな、欅、七葉樹とちなどの大木が、高く梢を連ねてほの暗い。林を抜けると、一軒の小屋がある。
ある偃松の独白 (新字新仮名) / 中村清太郎(著)
諸君は深山の沼林ボッギイ・ウッドの寂蓼を味いたることありや、何年かの落葉(七葉樹とちだの、桂だの、沢栗だの)の、肉が消えて網のような繊維ばかり残り、それも形がおぼろになって、この沼の中に月の光を浴び
梓川の上流 (新字新仮名) / 小島烏水(著)