一碧いっぺき)” の例文
哨兵しょうへいたちが雑談していた。雲もない一碧いっぺきの空に、かさなり合っている山々の秋色しゅうしょく、その裾に見える湖の明るさ、ふとすると、とりに、欠伸あくびを誘われそうだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
い棄てつ、おもむろに歩を移して浜辺に到れば、一碧いっぺき千里烟帆えんばん山に映じて縹渺ひょうびょうのごとし。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
海は実にげるなり。近午の空は天心にいたるまで蒼々あおあおと晴れて雲なく、一碧いっぺきの海は所々しょしょれるように白く光りて、見渡す限り目に立つひだだにもなし。海も山も春日を浴びて悠々ゆうゆうとして眠れるなり。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)