一矢ひとや)” の例文
おお釣鐘と白拍子と、飛ぶ、落つる、入違いれちがいに、一矢ひとやすみやかに抜取りまして、虚空こくうを一飛びに飛返ってござる。が、ここは風が吹きぬけます。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うかつに、立ったら一矢ひとやであろう。彼は、着物をおいた所まで、細心に、這って行った。肌も拭わず、身にまといかけた。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この勢いのいい獣に比べると、向山むこうやまから鹿の飛び出した時は、石屋の坂の方へ行き、七回りのやぶへはいった。おおぜいの村の人が集まって、とうとう一矢ひとやでその鹿を射とめた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そちは剣道では一家中並ぶ者のない達人と聞くが、弓と馬とは弓馬と申して表芸の中の表芸、武士たる者の心得なくてはならぬ。そちにも心得あることと思う。立ち出でて一矢ひとやつかまつれ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俊寛 ただ一矢ひとやを! わしのうでにまだ力があるうちに!
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)