一点ひとつ)” の例文
旧字:一點
その雪烟ゆきけむりの中に迷うが如き火の光が一点ひとつ、見えつ隠れつ近寄って来たので、忠一は思わず声をあげて呼んだ。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この指一本、妙の身体からだかくした日にゃ、按摩あんまの勢揃ほど道学者輩がつえを突張って押寄せて、垣覗かきのぞきを遣ったって、黒子ほくろ一点ひとつも見せやしない、誰だと思う、おい、己だ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すると又、突然いきなりふんどし一点ひとつで蚊帳の外に跳出とびだしたが、自分の荷物は寝る時のまんまで壁側にある。ホツと安心したが、猶念の為に内部なかを調べて見ると、矢張変りが無い。「フフヽヽ」と笑つて見た。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)