一庵いちあん)” の例文
ふと、明石の浦の一庵いちあんをいま思い出したのは、そこに幼少のときから好きで好きでたまらないおじいさんが住んでいるからだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「いいえ、近ごろ小松谷のほとりに、一庵いちあんを作ってもらい、そこにいて専念、琵琶の工夫をしているのだとか聞きまする」
だのに、もう乱世の功名を見限って、栗原山に一庵いちあんをむすび、風月をたのしみ、古人の書を友とし、詩を作り、たきぎを割って、たまたま訪れる客にも、決して会わないという——里では噂だった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山に一庵いちあんをむすび、みずからたきぎを割り水をんで、孤寂こじゃくな山中人になりきっているとは——樵夫きこり猟夫りょうしなどの口から風のたよりには聞えて来るが、さとの者も、旧臣たちも、まだ誰もゆるされて
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)