一寸ちょッと)” の例文
育つにれて、丸々とふとって可愛らしかったのが、身長せいに幅を取られて、ヒョロ長くなり、かおひどくトギスになって、一寸ちょッと狐のような犬になって了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
中島に橋、常に、焼麩やきふ商ふ人の居し辺は、全く往来止めの群衆にて、漁史は、一寸ちょッと覗きかけしも足を進むべき由なく、其のまゝ廻りて、交番の焼け跡の方に到り、つま立てゝ望む。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
三日で済む苦しみを一週間に引延すだけの事なら、いっそ早く片付けた方がましではあるまいか? 隣ののそばに銃もある、而も英吉利製イギリスせい尤物わざものと見える。一寸ちょッと手を延すだけの世話で、直ぐらちが明く。
「あら……屹度きっと違うわ。一寸ちょッと然うしてらッしゃいよ……」
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)