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さいぎょうじょい
背広の服で、
足拵えして、
帽を
真深に、
風呂敷包を小さく
西行背負というのにしている。彼は名を
光行とて、医科大学の学生である。
色
褪せた
鬱金の風呂敷、
真中を紐で
結えた包を、
西行背負に胸で結んで、これも信玄袋を手に一つ。片手に
杖は
支いたけれども、足腰はしゃんとした、人柄の
可いお
爺様。
これも風呂敷包を
中結えして
西行背負に背負っていたが、
道中へ、弱々と出て来たので、横に
引張合った杖が、一方通せん坊になって、
道程標の辻の処で、教授は足を留めて前へ通した。