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こわたり
「サア、親分、
神輿を上げて下さいよ、今度こそ本当の大変、——
古渡りの大変ッ」
古渡の
錫の
真鍮象眼の
茶托に、
古染付の結構な茶碗が五人前ありまして、
朱泥の
急須に今茶を入れて呑もうと云うので、南部の
万筋の
小袖に
白縮緬の
兵子帯を締め、
本八反の
書生羽織で
秋風に白波さわぎと萬葉集にうたはれたのは
思へば久遠の時代であるやうだけれど、
平の
將門が西の
大串から、
東の
小渡へ船を漕いだ時は、一面の
水海だつたとはいふまでもない。