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諦
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あきら
ふりがな文庫
“
諦
(
あきら
)” の例文
伊豆屋の若旦那が土左衞門になつたと聽いて、橋場まで行つて見ましたが、三輪の親分が睨め廻してゐるから、
諦
(
あきら
)
めて歸りましたよ。
銭形平次捕物控:321 橋場の人魚
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「——まあ
諦
(
あきら
)
めるんですね、あなたの来ることは半月もまえにわかっていたし、どうやらあなたは赤髯に好かれたらしいですからね」
赤ひげ診療譚:01 狂女の話
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おっしゃってるじゃありませんか? どれもこれもみんな「さるべき
契
(
ちぎ
)
り」なのだと思って
諦
(
あきら
)
めてしまえば別に悲しいこともないわ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
「いいえ違います。あなたは何にも御存知ないのです」と太子は静かに、しかし
諦
(
あきら
)
め切ったように淋しい微笑を
湛
(
たた
)
えて頭を振られた。
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
責
(
せ
)
めてそんなものが一
幅
(
ぷく
)
でもあつたらと
思
(
おも
)
つた。けれども
夫
(
それ
)
は
自分
(
じぶん
)
の
呼吸
(
こきふ
)
する
空氣
(
くうき
)
の
屆
(
とゞ
)
くうちには、
落
(
お
)
ちてゐないものと
諦
(
あきら
)
めてゐた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
▼ もっと見る
「なんとか、
諦
(
あきら
)
めさせましょう」と、ぜひなく答えたものの、いつか板挟みになっている万吉、
肚
(
はら
)
の底では、密かに弱りぬいている。
鳴門秘帖:02 江戸の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
平中の腹の底には
矢張
(
やはり
)
そう云う風な
己惚
(
うぬぼ
)
れがあるので、あれ程にされてもなお
懲
(
こ
)
りず、まだほんとうには
諦
(
あきら
)
めていなかったのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
文学によって革命者もしくは反革命者になったのであって、みずから建設に協力してきた文学上の流行に、今は
諦
(
あきら
)
めの念で従っていた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
けれどその時間の長短は、その人たちには実に余儀ない推移で、思いきりや
諦
(
あきら
)
めでは到底満足されない生死の
葛藤
(
かっとう
)
が無論あったはずだ。
芳川鎌子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
諦
(
あきら
)
めてしまったが、その翌晩になるとまた戸外でニャオと啼いた、また起きて、戸を開けて見てやったがそれっきり音沙汰が無い。
百姓弥之助の話:01 第一冊 植民地の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
あの当時から数えてもう四カ月も
経
(
た
)
っている今日、今迄
行方
(
ゆくえ
)
不明の人が現れないとすれば、もう死んだと
諦
(
あきら
)
めるよりほかはありません。
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
「——せんの頃は、夜来ても、いつも
留守
(
るす
)
だった。で、もうこの頃は、来るのを
諦
(
あきら
)
めていたんだが」朝野は酒の入った光った顔を
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
母は悲しそうに首を
垂
(
た
)
れた。しばしば言葉もとぎれた。もう一度顔をあげたときには
諦
(
あきら
)
めたように、ややはきはきとものを言った。
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
しかし人間一生涯の中に一度でも面白いと思う事があればそれで生れたかいがあるんだ。時節が来たら
諦
(
あきら
)
めをつけなくっちゃいけない。
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
そうするとあの人も見え隠れに後からついて来て、あの辺の横町でしばらく
鼬鼠
(
いたち
)
ごっこしているうちに、
諦
(
あきら
)
めて帰って行ったものなの。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、彼は今までは、
諦
(
あきら
)
めていた。日本婦人の教養が現在の程度で止まっている以上、そうしたことを、妻に求めるのは無理である。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
何の理由とも知らず、唯そういう運命の者だという迷信に
諦
(
あきら
)
めを附けて日を送る女が世の中から貞女だと称讃される事となった。
私の貞操観
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
気も心も
萎
(
な
)
えきった祖母は、しまいには
諦
(
あきら
)
めたらしく、家の暮しがあまりに苦しいので、お金の工面に帰った母親が、金の工面ができず
抱茗荷の説
(新字新仮名)
/
山本禾太郎
(著)
蒼
(
あお
)
い顔をしたおとなしい人で、さほどの年でもないのに、この頃は余り描かないらしい。何となく、
諦
(
あきら
)
めているというような感じがする。
九谷焼
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
そのうちに一箇月あまりの日がたってから、もう
諦
(
あきら
)
めていたあの女の手紙が
築地
(
つきぢ
)
の病院から来た。それは怖ろしい手紙であった。
水郷異聞
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
いかんせん昔おもえば見ず知らずとこれもまた寝心わるく
諦
(
あきら
)
めていつぞや聞き流した誰やらの異見をその時初めて
肝
(
きも
)
のなかから探り
出
(
いだ
)
しぬ
かくれんぼ
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
贅沢の限りを尽くした人の最後の
落著
(
おちつ
)
き場所である。それが貴い悟りであるかも知れぬ、また止むを得ぬ
諦
(
あきら
)
めであるかも知れぬ。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
「ほう、生理的神経的の歪みですか。そしてこれを復習する極めて
稀
(
まれ
)
な幸運ですか。いや、お蔭さまで、
諦
(
あきら
)
めがついてきました」
英本土上陸戦の前夜
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが恋もなく悋気もない世界は、悟りの世界です。スッパリ
諦
(
あきら
)
めた世界です。もうそこにはうき世の苦しみ、悩みはありませぬ。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
仕
(
し
)
方なくそれは
諦
(
あきら
)
めたが、その
頃
(
ころ
)
から
割合
(
わりあひ
)
に手先の
器用
(
きよう
)
な
私
(
わたし
)
だつたので、「
少
(
せう
)
年
寫眞術
(
しやしんじゆつ
)
」の
説明
(
せつめい
)
に
從
(
したが
)
つて、
私
(
わたし
)
はとう/\寫
眞器
(
しんき
)
自作
(
じさく
)
を
志
(
こゝろざし
)
た。
写真と思ひ出:――私の写真修行――
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
小説家だか先生だか何だか知らないが、あの島田とくっついて学校を勝手にやめて、その時からもうおれはお前を死んだものとして
諦
(
あきら
)
めた。
冬の花火
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「ええ、あの時分はあなたがもうどうせ、私とは分れるものと思って、前のことなんぞはどうでもいいと
諦
(
あきら
)
めてしまったから」
雪の日
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
彼は始めて空想の夢を
覚
(
さま
)
して、及ばざる
身
(
み
)
の
分
(
ぶん
)
を
諦
(
あきら
)
めたりけれども、一旦
金剛石
(
ダイアモンド
)
の強き光に焼かれたる心は幾分の知覚を失ひけんやうにて
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
片親の父に相談してみても
物堅
(
ものがた
)
い老舗の老主人は、そんな赤の他人の白痴などに
関
(
か
)
まっても仕方がないと言って
諦
(
あきら
)
めさせられるだけだった。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
いろいろ頼んで見ましたが、つひにきいてくれませんでしたわい。これもわしには縁のないことだと、わしは
諦
(
あきら
)
めましたぢや。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
あゝ云ふことになると云ふも、皆な前世からの約束事と
諦
(
あきら
)
めてネ——それに
斯
(
か
)
うやつて
此方
(
こちら
)
の先生様が御親切にして下ださるもんですから
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
己は自分の事を
末流
(
ばつりゅう
)
だと
諦
(
あきら
)
めてはいるが、それでも少し侮辱せられたような気がした。そこで会釈をして、その場を
退
(
の
)
いた。
冬の王
(新字新仮名)
/
ハンス・ランド
(著)
亭主に死に別れたは
諦
(
あきら
)
めも付こうが、これはまた生きながら死んだも同然の亭主の顔を見るたびに想い出す、事実上の後家が大勢出来たのだ。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
身も心も一つと思いあった二人が、全くの他人となり、しかも互いに
諦
(
あきら
)
められずにいながら、長く他人にならんと思いつつ暮した三月である。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
『さア行かう。』と、小池はお光の買つた物を知らうとするのを
諦
(
あきら
)
めて、さつさと歩き出した。灰のやうな
土埃
(
つちぼこ
)
りが煙の如く足元から立つた。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
ひどい苦痛の跡の
弛緩
(
ちかん
)
、勝算の無い闘いの跡の
諦
(
あきら
)
めが見える。こういう容態が昨今暫らくの
間
(
あいだ
)
見えずにいたという事に、女は急に気が付いた。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
聞ば重五郎は
船場
(
ふなば
)
にて
横死
(
わうし
)
の由
是
(
これ
)
全
(
まつた
)
く儀左衞門殿が手に
掛
(
かけ
)
られしに
相違
(
さうゐ
)
なし然れば御内儀必ず我を
恨
(
うら
)
み給ふな是皆
自業自得
(
じごふじとく
)
と
諦
(
あきら
)
められよと申を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そして女の
諦
(
あきら
)
めたような平気さが極端にいらいらした嫌悪を刺戟するのだった。しかしその
憤懣
(
ふんまん
)
が「小母さん」のどこへ向けられるべきだろう。
ある崖上の感情
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
無理な事をさせてはならないというので、
傍
(
はた
)
から勧めて早稲田に入れることにした。それからは
諦
(
あきら
)
めて余り勉強をしない。
蛇
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
いつの間にか病人のところへ
洩
(
も
)
れてしまって、
枕元
(
まくらもと
)
へ呼び寄せての度重なる意見もかねがね
効目
(
ききめ
)
なしと
諦
(
あきら
)
めていた父親も、今度ばかりは、打つ
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
こちらの方はこれで良いと
諦
(
あきら
)
めていた矢さきの折だっただけに、梶はまだ断ち切れぬ糸も感じて、ふと
躓
(
つまづ
)
くよろめきに似た思いもするのだった。
罌粟の中
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
重くしても困りますからね。遅かれ早かれ一度はこういう時期が来るんでしょうからね、まあ
諦
(
あきら
)
めるほかないでしょうよ
父の出郷
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
この笛が地上から姿を消してくれさえすれば、あのひとは月の国へ帰ることを
諦
(
あきら
)
めるかも知れない筈だということを——
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
うっかり読んだり聞いたりすると、藍丸国に大変な事が起るのだ。とてもお前達に見せる事は出来ない。
諦
(
あきら
)
めて早く帰れ
白髪小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
茶色が「いき」であるのは、一方に色調の
華
(
はな
)
やかな性質と、他方に飽和度の減少とが、
諦
(
あきら
)
めを知る媚態、
垢抜
(
あかぬけ
)
した色気を表現しているからである。
「いき」の構造
(新字新仮名)
/
九鬼周造
(著)
マアそう云った理窟じゃねえか。貴様が余計なおせっかいをして、俺の正体を
看破
(
みやぶ
)
ったのが運の尽きというものだ。自業自得と
諦
(
あきら
)
めるがいいのさ。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
やむを得ぬことと
諦
(
あきら
)
めて気持よくやろう——本気で掘って、そうして早くこの空想家に
目
(
ま
)
のあたり証拠を見せつけて
黄金虫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
夜
(
よ
)
が
更
(
ふ
)
けて
寒
(
さむ
)
からうと、
深切
(
しんせつ
)
に
為
(
し
)
たに
違
(
ちがひ
)
ないが、
未練
(
みれん
)
らしい
諦
(
あきら
)
めろ、と
愛想尽
(
あいさうつか
)
しを
為
(
さ
)
れたやうで、
赫
(
くわつ
)
と
顔
(
かほ
)
が
熱
(
あつ
)
くなる。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
ぼくみたいに、弱気な人間には、ひとから
侮辱
(
ぶじょく
)
されて
抵抗
(
ていこう
)
の手段がないと
諦
(
あきら
)
め切る時ほど、悲しい事はありません。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
犬がくわえて行った靴のことは、彼はもう
諦
(
あきら
)
めていた。発田がそれを穿いていることを、彼はある日見たのだから。
黄色い日日
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
“諦”の解説
諦(たい、sa: सत्य, satya、サティヤ、pi: सच्च, sacca、サッチャ)とは、仏教において真理や悟りを意味する語。
(出典:Wikipedia)
諦
常用漢字
中学
部首:⾔
16画
“諦”を含む語句
諦視
御諦
諦観
諦念
妙諦
要諦
真諦
諦悟
掲諦
諦觀
諦聴
波羅僧羯諦
波羅僧掲諦
波羅掲諦
忍諦
苦諦
羯諦
第一義諦
諦念主義
集諦
...