トップ
>
攫
>
つか
ふりがな文庫
“
攫
(
つか
)” の例文
スイスの一部では最後の
稈
(
わら
)
一
攫
(
つか
)
みを苅り取った人を麦の山羊と名付け、山羊然とその頸に鈴を付け、行列して伴れ行き酒で盛り
潰
(
つぶ
)
す。
十二支考:06 羊に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
然
(
しか
)
れども彼は一方においては事物の真相を察する
烱眼
(
けいがん
)
あるに
係
(
かかわ
)
らず、いわゆる天下の大勢を既に
来
(
きた
)
れるに
攫
(
つか
)
み、
未
(
いま
)
だ至らざるに察し
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ただ暗い所へ行きたい、行かなくっちゃならないと思いながら、雲を
攫
(
つか
)
むような
料簡
(
りょうけん
)
で歩いて来ると、
後
(
うしろ
)
からおいおい呼ぶものがある。
坑夫
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
反絵は部屋の中へ飛び込むと、一人の使部の首を
攫
(
つか
)
んで床の上へ投げつけた。使部の腕からはかかえた白鷺の尾羽根が飛び散った。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
その脊は
覆
(
くつがへ
)
りたる舟の如し。忽ち彼雛鷲は
電
(
いなづま
)
の撃つ勢もて、さと
卸
(
おろ
)
し來つ。
刃
(
やいば
)
の如き
利爪
(
とづめ
)
は魚の背を
攫
(
つか
)
みき。母鳥は喜、色に
形
(
あらは
)
れたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
▼ もっと見る
お松は袖を
攫
(
つか
)
まえられながら、じっと耳を澄まして聞いている。直き
傍
(
そば
)
のように聞えるかと思うと、又そうでないようにもある。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「おゝ
厭
(
や
)
なこつた、
要
(
え
)
らねえよ」おつぎは
少
(
すこ
)
し
身
(
み
)
を
屈
(
かが
)
めて
手桶
(
てをけ
)
の
柄
(
え
)
を
攫
(
つか
)
んで
其
(
そ
)
の
儘
(
まゝ
)
身
(
み
)
を
延
(
のば
)
すと
手桶
(
てをけ
)
の
底
(
そこ
)
が三
寸
(
ずん
)
ばかり
地
(
ち
)
を
離
(
はな
)
れた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
しかし、男は矢庭に女の両手をひっ
攫
(
つか
)
んで真直に引きおろし、血走った眼を据え
腮
(
あご
)
をぐっと引きしめて、何処までも追及した。
生さぬ児
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
渾沌
(
こんとん
)
とした問題を処理する第一着手は先ず大きいところに眼を着けて要点を
攫
(
つか
)
むにあるので、いわゆる第一次の近似である。
物理学の応用について
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
そして例の白帽を力いっぱいひっ
攫
(
つか
)
みながら自分で玄関へ出て行って夕日に照りはえている庭の方へとドアーを開け放した。
サレーダイン公爵の罪業
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
さきを握られてゐる自分の袂を兩手で
攫
(
つか
)
んで、うん—うん—うんと云ふやうに、左右に三度振つたかと思ふと、それが千代子の手から離れた。
泡鳴五部作:02 毒薬を飲む女
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
昔おくらという女がただ一人、田の
畔
(
くろ
)
に幼児を寝させて置いて田の草を取っていると、不意に
鷲
(
わし
)
が来てその子を
攫
(
つか
)
んで飛んで行ってしまった。
野草雑記・野鳥雑記:02 野鳥雑記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「京子、何してるのや。……
丑
(
うし
)
の時參りか。」と、力を込めた聲で言ふとともに、道臣は躍りかゝつて、金槌を持つた京子の腕を引つ
攫
(
つか
)
んだ。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
◯わが日は
駅使
(
はゆまづかい
)
(
早馬使
(
はやうまづかい
)
、駅丁)よりも
迅
(
はや
)
く、いたずらに過ぎ去りて
福祉
(
さいわい
)
を見ず、その走ること
葦船
(
あしぶね
)
の如く、物を
攫
(
つか
)
まんとて飛びかける
鷲
(
わし
)
の如し
ヨブ記講演
(新字新仮名)
/
内村鑑三
(著)
月明りの下でじっと耳を澄ましているとララと響いて来ます。土竜が瓜を噛んでるんですよ。その時あなたは叉棒を
攫
(
つか
)
んでそっと行って御覧なさい
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
追っ
駈
(
か
)
けて
攫
(
つか
)
まえることも出来ない。お前さんはただ獲ものの出て来るのを、澄まして待っているのね。いつでもこの隅のところに坐っていてさ。
一人舞台
(新字新仮名)
/
アウグスト・ストリンドベリ
(著)
そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会を
攫
(
つか
)
むに
於
(
おい
)
て
敢
(
あえ
)
て
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するところは無い
筈
(
はず
)
だ。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
まるで雲を
攫
(
つか
)
むようなことを言ってすましていられる兄の性格が、
羨
(
うらや
)
ましくもあり憎々しくもあるような気がされた。
贋物
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
而ると
鉛
(
なまり
)
のやうに重く
欝結
(
うつけつ
)
した頭が幾分輕く滑になつて、體中がぞく/\するやうに
擽
(
くすぐ
)
ツたくなる………何か
引
(
ひ
)
ツ
攫
(
つか
)
むでもしやくしやにして見たい。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
ふとした出来心から店頭のパンを
攫
(
つか
)
み取り、これを食うて僅に餓死を免れたとしたところが、それは盗罪にはならぬと論じておったように記憶する。
法窓夜話:02 法窓夜話
(新字新仮名)
/
穂積陳重
(著)
新「我慢してお出でよ、私が
負
(
おぶ
)
い
度
(
た
)
いが、包を
脊負
(
しょ
)
ってるから
負
(
おぶ
)
う事が出来ないが、私の肩へ
確
(
しっか
)
り
攫
(
つか
)
まってお出でな」
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼は狼狽の余り怪物と思って狐猿を
攫
(
つか
)
むか何うかしたのでしょう、狐猿も死に物狂いに彼の頬を掻き彼の手に噛み附いたのは此の有様で分って居ます
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
皆は、それとなく此人の為す所を見て居たが、菊池君は両手に膝頭を
攫
(
つか
)
んで、
俯
(
うつむ
)
いて自分の前の膳部を睨んで居るので、誰しも話しかける機会を失つた。
菊池君
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
左の手に片袖を
攫
(
つか
)
み、右の手にて我左の袖をかかげしまま、左の二の腕を握り、右足を高欄へかけ、きつと見え、この
科
(
こなし
)
にてせりあげになる所もまた立派なり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
去来
(
きょらい
)
、
丈草
(
じょうそう
)
もその人にあらざりき。
其角
(
きかく
)
、
嵐雪
(
らんせつ
)
もその人にあらざりき。
五色墨
(
ごしきずみ
)
の徒もとよりこれを知らず。
新虚栗
(
しんみなしぐり
)
の時何者をか
攫
(
つか
)
まんとして得るところあらず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
これはむろん
攫
(
つか
)
む工合いにもよりけりであるが、ここに述べたのは
粟
(
あわ
)
とか米とかの例に用いたものである。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
譬
(
たと
)
えば一箇の
獣
(
けもの
)
と
相搏
(
あいう
)
って之を獲ようとして居る間に、四方から出て来た獣に脚を
咬
(
か
)
まれ腹を咬まれ肩を
攫
(
つか
)
み裂かれ背を攫み裂かれて倒れたようなものである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
全体私は
骨格
(
からだ
)
は少し大きいが、本当は柔術も何も知らない、生れてから人を
打
(
うっ
)
たこともない男だけれども、その権幕はドウも撃ちそうな
攫
(
つか
)
み掛りそうな
気色
(
けしき
)
で
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
いざとて偃松帯を上る。根曲り竹ならば、押分け押分けて上らるべし。偃松は押分くること能わず。手にてその枝を
攫
(
つか
)
み、足にてその枝を踏みて、斜に上るの外なし。
層雲峡より大雪山へ
(新字新仮名)
/
大町桂月
(著)
スワとばかり大手を拡げて猟犬のように跳り懸った瞬間、鹿は一躍して偃松の茂みの中に没してしまったので、空しく虚空を
攫
(
つか
)
んだ雄吉は、
筋斗
(
もんどり
)
打ってドウと倒れた。
大井川奥山の話
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
背後に二人の小姓が
各
(
おの/\
)
二本の刀を両手に
攫
(
つか
)
んで捧げた形には思はず梅原と二人で吹出して
仕舞
(
しま
)
つた。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
或る意味では、同じ本を何遍も何遍も繰返して読むべきであるが、他の場合では、或る書物は一寸目を通すだけでその内容を一度に
攫
(
つか
)
み得るよう練習しなければならぬ。
洪川禅師のことども
(新字新仮名)
/
鈴木大拙
(著)
こう
言
(
い
)
って、
魔女
(
まじょ
)
はラプンツェルの
美
(
うつく
)
しい
髪
(
かみ
)
を
攫
(
つか
)
んで、
左
(
ひだり
)
の
手
(
て
)
へぐるぐると
巻
(
ま
)
きつけ、
右
(
みぎ
)
の
手
(
て
)
に
剪刀
(
はさみ
)
を
執
(
と
)
って、ジョキリ、ジョキリ、と
切
(
き
)
り
取
(
と
)
って、その
見事
(
みごと
)
な
辮髪
(
べんぱつ
)
を
ラプンツェル
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
ちょいとしゃがめば、ちょいと手に
攫
(
つか
)
めると云う為事で、あぶなげのないのでなくちゃ厭だ。そう云う旨い為事があるのかい。福の神の
髻
(
たぶさ
)
を攫んで放さないと云う為事だ。
橋の下
(新字新仮名)
/
フレデリック・ブウテ
(著)
金は時たま三十四十と
攫
(
つか
)
んでは来るが、
表面
(
うわべ
)
に見せているほど、内面は気楽でなかった。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
皆顔は
漆
(
うるし
)
のように黒くて、その
睛
(
ひとみ
)
は
榴
(
ざくろ
)
よりも大きかった。怪しい者は叟を
攫
(
つか
)
んでいこうとした。汪は力を出して奪いかえした。怪しい者は舟をゆりだしたので
纜
(
ともづな
)
が切れてしまった。
汪士秀
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
汚吏の姿消ゆるとともに爪をその侶にむけ、濠の上にてこれを
攫
(
つか
)
みぬ 一三六—一三八
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
そしてかく解してのみ吾々は空間の直観の質的な特質を
攫
(
つか
)
むことが出来るであろう。
物理的空間の成立まで:(カントの空間論)
(新字新仮名)
/
戸坂潤
(著)
おのれはそのまま子供に掛けたる古袷の袖引き
攫
(
つか
)
みて、肥大なる身をその脇に横たへむとせしに、子供ながらも空腹に眼敏き松之介、これに睡りを醒まされて、薄暗き燈に父を認め
磯馴松
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
吾妻下駄
(
あずまげた
)
の音は天地の
寂黙
(
せきもく
)
を破りて、からんころんと月に響けり。渠はその音の
可愛
(
おかし
)
さに、なおしいて響かせつつ、橋の
央
(
なかば
)
近く来たれるとき、やにわに
左手
(
ゆんで
)
を
抗
(
あ
)
げてその
高髷
(
たかまげ
)
を
攫
(
つか
)
み
義血侠血
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
如何
(
いか
)
でかこれに
堪
(
た
)
ゆるを得んや、
最早
(
もはや
)
寒風に抵抗して呼吸するの力なく、特に浮腫せる胸部を剛力の背に圧迫せし故、呼吸ますます苦しく、
空
(
くう
)
を
攫
(
つか
)
みて
煩悶
(
はんもん
)
するに至れり、今は刻一刻
寒中滞岳記:(十月一日より十二月廿一日に至る八十二日間)
(新字新仮名)
/
野中至
(著)
変な笑いに異状を示しながら、
袂
(
たもと
)
の中から取出したのは大きな
蝦蟇
(
ひきがえる
)
。それの片足を
攫
(
つか
)
んでブラ
提
(
さ
)
げながら、ブランブランと打振り打振り、果てはお綾の
懐中
(
ふところ
)
に入れようとするのであった。
備前天一坊
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
この奇利を
易々
(
やすやす
)
と
攫
(
つか
)
んだ椿岳の奇才は
天晴
(
あっぱれ
)
伊藤八兵衛の弟たるに恥じなかった。
淡島椿岳:――過渡期の文化が産出した画界のハイブリッド――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
そこで私は、たいへん自然に、ベッドから起き上って脱出する機会を
攫
(
つか
)
んだ。
柿色の紙風船
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ルパンは突然プッと
噴飯
(
ふきだ
)
した。そして死骸を
攫
(
つか
)
んでグイと
傍
(
そば
)
へ押し転がした。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
点灯
(
ひともし
)
ころの家の中は薄暗い、何の気づかずに土間へ入って、バッタリ万年屋と顔を合わせた女房は、ハッとして逃げようとする。と、いきなり亭主はその後髪を
攫
(
つか
)
んだ。女は悲鳴を揚げる。
世間師
(新字新仮名)
/
小栗風葉
(著)
梁川君は
端的
(
たんてき
)
に其求むるものを探し当てゝ、堂々と凱旋し去った。
鈍根
(
どんこん
)
の彼はしば/\
捉
(
とら
)
え得たと思うては失い、
攫
(
つか
)
んだと思うては失い、今以て七転八倒の笑止な歴史を繰り返えして居る。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
無我夢中で駈けて行く中に、何時しか途は山林に入り、しかも、知らぬ間に自分は左右の手で地を
攫
(
つか
)
んで走つてゐた。何か身體中に力が充ち滿ちたやうな感じで、輕々と岩石を
跳
(
と
)
び越えて行つた。
山月記
(旧字旧仮名)
/
中島敦
(著)
其
冒険
(
ぼうけん
)
なること上州人の
能
(
よ
)
く及ぶ所に非ずと云ふ、其方法に依れば
熊
(
くま
)
を
銃撃
(
じゆうげき
)
して命中
誤
(
あやま
)
り、熊
逃走
(
とうさう
)
する時之を
追駆
(
つゐく
)
すれば熊
遂
(
つひ
)
に
怒
(
いか
)
りて直立し、
将
(
まさ
)
に一
跳
(
てう
)
人
(
ひと
)
を
攫
(
つか
)
まんとす、此に於て
短剱
(
たんけん
)
を以て之を
貫
(
つらぬ
)
き
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
攫
(
つか
)
まれようと、引きずられようと、自由自在になっていた。
私の母
(新字新仮名)
/
堺利彦
(著)
攫
漢検1級
部首:⼿
23画
“攫”を含む語句
引攫
一攫
攫取
人攫
一攫千金
掻攫
鷲攫
把攫
手攫
攫徒
攫客
強攫
一抓一攫
攫出
一攫一抓
吹攫
打攫
攫得
攫浚付
攫者
...