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先刻
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さつき
ふりがな文庫
“
先刻
(
さつき
)” の例文
その時に、彼は自分よりも先きに、
先刻
(
さつき
)
の老婆が
蒼惶
(
さうくわう
)
として、飛び付くやうに、その空いた座席に縋り付いて居るのを見たのである。
我鬼
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「少し調べ度いことがある。いや、
先刻
(
さつき
)
から俺に話し度がつて居る人があるんだよ。人目のない所で、その人を待つて居ようと思ふ」
銭形平次捕物控:304 嫁の死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
『ハ、何にも……然う/\、
先刻
(
さつき
)
静子さんがお出になつて、アノ、
兄様
(
にいさん
)
もお
帰省
(
かへり
)
になつたから先生に遊びに
被来
(
いらしつ
)
て下さる様にツて。』
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
「キヤノンさん、
先刻
(
さつき
)
から拝見してゐると、貴方は
頻
(
しき
)
りと玉蜀黍を
召
(
め
)
し
食
(
あが
)
つていらつしやるやうですが、お
腹
(
なか
)
に悪かありませんか。」
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
向ふの端の部屋の前に、
先刻
(
さつき
)
の男と並んで、宿の浴衣の胴中に、ちぎれる程伊達卷の喰ひ込んだ後姿を見せて、小柄な女が立つてゐた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
▼ もっと見る
何
(
なん
)
だよう、
私
(
わたし
)
が
先刻
(
さつき
)
から見てゐると、お
前
(
まへ
)
がこゝを
往
(
い
)
つたり
来
(
き
)
たりしてえるが、
眼
(
め
)
が
開
(
あ
)
いて
居
(
ゐ
)
るから
能
(
よ
)
く
似
(
に
)
た人が
有
(
あ
)
ると
思
(
おも
)
つてゐたら
心眼
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
此時になつて初めて其の
服装
(
みなり
)
を見ると、依然として
先刻
(
さつき
)
の鼠の衣だつたが、例の土間のところへ来ると、そこには蓑笠が揃へてあつた。
観画談
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
先刻
(
さつき
)
も申したやうに来年は旋盤も四五台
殖
(
ふ
)
やす積りでごわす。此所で取つてゐなさるだけの給金は、わつしの所でも差し上げますわい。
煤煙の匂ひ
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
熱
(
あつ
)
い
茶
(
ちや
)
が
漸
(
やうや
)
く
内儀
(
かみ
)
さんの
前
(
まへ
)
に
汲
(
く
)
まれた。
被害者
(
ひがいしや
)
は
老父
(
ぢいさん
)
と
座敷
(
ざしき
)
の
隅
(
すみ
)
で
先刻
(
さつき
)
からこそ/\と
噺
(
はなし
)
をして
居
(
ゐ
)
る。さうして
更
(
さら
)
に
老母
(
ばあさん
)
を
喚
(
よ
)
んだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「ほんとうに、
先刻
(
さつき
)
から変でした」と私は急いで立つと彼も立つた、私たち二人の座席のあひだから白い煙がうすく立ち始めた。
燃える電車
(新字旧仮名)
/
片山広子
(著)
別
(
わか
)
れ
際
(
ぎは
)
に父は、舎費を三ヶ月分納めたので、
先刻
(
さつき
)
渡した
小遣銭
(
こづかひせん
)
を半分ほどこつちに
寄越
(
よこ
)
せ、宿屋の払ひが不足するからと言つた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
僕と同じい中段の向側の人も
先刻
(
さつき
)
からむづむづしてゐたが、僕が喫み始めたのでやつと安心をしてその人も煙草をふかし始めた。
京洛日記
(旧字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
たつた
先刻
(
さつき
)
心ゆくまで味つた近頃にない喜び——一つは自分より熟練だと考へられてゐる多數の先輩に對して見事に占め得た勝利の喜び
実験室
(旧字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
書終り
偖
(
さて
)
いかに酒は來りしや
大膳太夫
(
だいぜんのたいふ
)
殿と云へば露伴子ヂレ込み
先刻
(
さつき
)
聞合せると云たばかりに沙汰なしとは
酷
(
ひど
)
い奴だと烈しく手を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
妹は最う
先刻
(
さつき
)
の事をケロリ忘れたやうに、夫の傍へ坐つて活々した話振である。油井は又途中見て来た色々の話をして聞かせる。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
先刻
(
さつき
)
旦那があんなにお魚を買ひ込んだと言つてゐたが、話半分にも當らぬ例の大風呂敷であつたのか。と、お光は微笑みながら
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
先刻
(
さつき
)
からまちあぐんでゐた富士が、漸くいま雲から半身を表はしたのだ。昨夜の時雨で、山はもう完全にまつ白になつてゐた。
樹木とその葉:28 青年僧と叡山の老爺
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「待てよ。さう言へば己はどこかであれを見たやうな気がする。
先刻
(
さつき
)
からさう思つて見てゐたんだがやつと今思ひ出したぞ。」
フアイヤ・ガン
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
坐
(
すわ
)
つて五
分
(
ふん
)
と
立
(
た
)
たないうちに、
先刻
(
さつき
)
の
笑聲
(
わらひごゑ
)
は、
此
(
この
)
變
(
へん
)
な
男
(
をとこ
)
と
坂井
(
さかゐ
)
の
家族
(
かぞく
)
との
間
(
あひだ
)
に
取
(
と
)
り
換
(
か
)
はされた
問答
(
もんだふ
)
から
出
(
で
)
る
事
(
こと
)
を
知
(
し
)
つた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「
先刻
(
さつき
)
から見て居るのよ、成程能く似て居ると思つて感心して居るのよ。」と女は言つて笑を含んで
熟
(
ぢつ
)
と僕の顏を見て居る。
少年の悲哀
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
先刻
(
さつき
)
から、
出入
(
ではひ
)
りのお
秋
(
あき
)
の
素振
(
そぶり
)
に、
目
(
め
)
を
着
(
つ
)
けた、
爐邊
(
ろべり
)
に
煮
(
に
)
ものをして
居
(
ゐ
)
た
母親
(
はゝおや
)
が、
戸外
(
おもて
)
に
手間
(
てま
)
が
取
(
と
)
れるのに、フト
心着
(
こゝろづ
)
いて
一席話
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
末と云ふ女中はお照の事を奥様と云つて居る。畑尾は
先刻
(
さつき
)
頼まれて帰つた事の挨拶に二三
軒
(
げん
)
の
家
(
うち
)
へ出掛けて行つたのである。
帰つてから
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
先刻
(
さつき
)
のあの爐の傍で——顫へながら、むか/\しながら、そしてすつかり
蒼褪
(
あをざ
)
めて、
荒
(
すさ
)
んで、雨風に叩きつけられた自分の姿を意識しながら。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
さうして
先刻
(
さつき
)
と同じやうな鹿爪らしい顔付で、寒い
為
(
せゐ
)
かいくらか鼻頭をあかくして、——尚も家路とは反対な同じ道をヒヨロ/\と歩いてゐた。
失題
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
父はかなたを向きたるまま「おッ
母
(
か
)
さんはどこかへ行つたかい」「ハイ
先刻
(
さつき
)
差配のおばさんの許まで行つて来るといふて」
小むすめ
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
「まあ、
貴方
(
あなた
)
でしたか。ほんとによくいらつしやいました。
先刻
(
さつき
)
から皆さんがお待兼でいらつしやいますよ。」と招じた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
『あゝ日が
照
(
あた
)
つて来た、』と音作は喜んで、『
先刻
(
さつき
)
迄は雪模様でしたが、こりや好い
塩梅
(
あんばい
)
だ。』斯う言ひ乍ら、弟と一緒に年貢の
準備
(
したく
)
を始めた。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼女はやがて歩き出しながら、
先刻
(
さつき
)
行き違つた少女のことを考へたのである。あの少女はまだ死なんて云ふことを考へる事が出來ないに違ひない。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
それは宇宙の巨大、人間の微小といふやうな
比喩
(
ひゆ
)
を無理にも暗示してゐた
先刻
(
さつき
)
の空とは、似ても似つかないものだつた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
先刻
(
さつき
)
から三人四人と絶えず
上
(
あが
)
つて来る見物人で
大向
(
おほむかう
)
はかなり
雑沓
(
ざつたふ
)
して来た。
前
(
まへ
)
の
幕
(
まく
)
から
居残
(
ゐのこ
)
つてゐる
連中
(
れんぢゆう
)
には待ちくたびれて手を
鳴
(
なら
)
すものもある。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
『それに山上講演のマルキシズムと、
先刻
(
さつき
)
の女中の、
院化
(
ゐんげ
)
はんも来なはるとで攻め立てられては三宝鳥も駄目ですよ』
仏法僧鳥
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
今煙草工場さ働きに行つてやすがな、
先刻
(
さつき
)
晝やすみに乳飮ませに連れてつて、歸つて來たばつかりなさうですから……
嘘をつく日
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
「さあ、ここへ来いよ! おらあ
先刻
(
さつき
)
は君たちに帰つて寝ろなんつて言つたつけが、また思ひ直したから、夜つぴてだつて君たちと騒ぎまはるぜ。」
ディカーニカ近郷夜話 前篇:05 五月の夜(または水死女)
(新字旧仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
持來るに長兵衞是は
先刻
(
さつき
)
の
口止
(
くちどめ
)
が併しお氣の毒と笑ひながら
豬口
(
ちよく
)
を
取
(
とり
)
酒
(
さけ
)
と
湯
(
ゆ
)
の
辭儀
(
じぎ
)
は仕ない者なりお
燗
(
かん
)
が
能
(
よい
)
中
(
うち
)
と
波々
(
なみ/\
)
受
(
うけ
)
是
(
これ
)
より長兵衞長八の兩人は酒を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
何処から何時の間に、はひつて来たのだらう?
先刻
(
さつき
)
迄は誰もゐなかつたのに。白い猫しかゐなかつたのに。さういへば今は白猫がゐなくなつてゐる。
夾竹桃の家の女
(新字旧仮名)
/
中島敦
(著)
先刻
(
さつき
)
から聞えて居たのかも知れない。あまり寂けさに馴れた耳は、新な声を聞きつけようとしなかつたのであらう。だから今珍しく響いて来た感じもない。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
それもどうも
望
(
のぞ
)
みはないらしいですがね、それよりも
金
(
かね
)
の
事
(
こと
)
ですよ。
先刻
(
さつき
)
、
僕
(
ぼく
)
が
此處
(
ここ
)
へ
入
(
はひ
)
らうとすると、
例
(
れい
)
のあの
牧師
(
ぼくし
)
上
(
あが
)
りの
會計
(
くわいけい
)
の
老爺
(
おやぢ
)
が
呼
(
よ
)
び
止
(
と
)
めるのです。
彼女こゝに眠る
(旧字旧仮名)
/
若杉鳥子
(著)
私は
先刻
(
さつき
)
まで彼女が仕かけてゐた乏しい
解
(
ほぐ
)
し物が束ねてあるのを寂しく見守りながら、自分のやうな男の妻になつた彼女の運命を、憫れと思ふ事も度々あつた。
金魚
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
水晶のやうに透きとほつた水が、ざん/\音をたててゐる谷川に沿つて、山と山のあひだを登つて行きますと、
先刻
(
さつき
)
見えなくなつた八の字がまた見えてきます。
八の字山
(新字旧仮名)
/
土田耕平
(著)
其三尺四方の
溝
(
どぶ
)
のやうな田池の中には、
先刻
(
さつき
)
大酔して人に
扶
(
たす
)
けられて戸外へ出たかの藤田重右衛門が、殆ど池の広さ一杯に、髪を
乱
(
み
)
だし、顔を
打伏
(
うつぶ
)
して、丸で
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
機関車は矢張ぶう/\
小言
(
こごと
)
を言つてゐる……其中に
先刻
(
さつき
)
の連中が酒の瓶や紙包みを
提
(
さ
)
げて飯屋を出て来て、
機関方
(
きくわんがた
)
が機関車へ
這上
(
はひあが
)
ると……
頓
(
やが
)
て汽車は動き出した。
椋のミハイロ
(新字旧仮名)
/
ボレスワフ・プルス
(著)
何だとて
傍
(
そば
)
へゆけば、まあ此処へお座りなさいと手を取りて、あの水菓子屋で桃を買ふ子がござんしよ、可愛らしき四つばかりの、
彼子
(
あれ
)
が
先刻
(
さつき
)
の人のでござんす
にごりえ
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「今夜たつた
先刻
(
さつき
)
の事よ! あの犬は此頃もう気が少し変になつて、妾の処に全で入りびたりなのよ。」
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死
(新字旧仮名)
/
長与善郎
(著)
先刻
(
さつき
)
義男に斯う云つてやるのだつたと思つた時に、みのるの眼には血がにじんで來るやうに思つた。
木乃伊の口紅
(旧字旧仮名)
/
田村俊子
(著)
『あんまり酒を飲まないやうにしてくれ。』といふなり弟は目をつむり、もう
先刻
(
さつき
)
から眠つてゐるもののやうになつた。『ぢや大事に。』けれども弟はそのまゝであつた。
亡弟
(新字旧仮名)
/
中原中也
(著)
なにね、
先刻
(
さつき
)
おかみさんが来て、私に嫌みを言つたもんだから、それから恵ちやんが——。
疵だらけのお秋
(新字旧仮名)
/
三好十郎
(著)
味方と思つた彌次連は、
先刻
(
さつき
)
から傍若無人の暴言を小面憎く思つて居た、敵であつたのだ。
二十三夜
(旧字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
「あゝ今夜もまたあぶれかな」「さうよ、
先刻
(
さつき
)
打つたのが
服部時計台
(
はつとり
)
の十一時の様だ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
私が
先刻
(
さつき
)
言ひ直したのが聞えなかつたのか、てつきり私の父だと思ひ込んで居たらしい伯母は、彼女の弟の代りに、そこに小さな子供の私が、物貰ひか何かの様に立つて居るのを見て
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
それが朝夕出入をして居る儀平とこの
親父
(
とつさあ
)
の仕業であつたと聞いた時は、驚きも怪みも一つになつて心頭から
憤
(
いきどほり
)
が
炎
(
ほのほ
)
のやうにもえたつた。
先刻
(
さつき
)
もお巡査さんの前に散々本人をきめつけた。
夜烏
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
“先刻”の意味
《名詞・形容動詞》
先程。ちょっと前。
以前から。すでに。とっくに。
(出典:Wiktionary)
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
刻
常用漢字
小6
部首:⼑
8画
“先刻”で始まる語句
先刻程