たけ)” の例文
またいう、コンモードは水陸ともに棲む、たけ十五フィート周十八インチ、頭ひらたひろく、尾細長くてとがる、褐色で脊と脇に栗色を点す。
あかつきに及び、何者とも知れず氷りたる雪の上を歩む音あり。新左衛門小屋の中より之をうかがふに、たけ一丈余りの男髪は垂れて眼を蔽へり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
あまつさえ陰々として、もすそは暗く、腰より上の白き婦人が、たけなる髪を振乱ふりみだしてたたずめる、その姿の凄じさに、予は寧ろ幽霊の与易くみしやすさを感じてき。
黒壁 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
蒼味がかッた連翹色れんぎょういろで、葉といえば、鼠みともつかず緑りともつかず、下手な鉄物かなもの細工を見るようで、しかもたけいっぱいに頸を引き伸して
あいびき (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
「天狗の宮の内陣にな。……そこに大きな木像がある。身のたけ二丈でやりを持っている。……宗介天狗の木像よ。……つまり彼奴きゃつらの守り本尊だ」
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身のたけ六尺に近く、黒き外套を着て、手にしぼめたる蝙蝠傘こうもりがさを持ちたり。左手ゆんでに少し引きさがりてしたがひたるは、ひげも髪も皆雪の如くなるおきななりき。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
諸将のうちに於て年最もわかしといえども、善戦有功、もとより人の敬服するところとなれるもの、身のたけ八尺、年三十五、雄毅開豁ゆうきかいかつ、孝友敦厚とんこうの人たり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
たけの高い木の四つ目垣をめぐらした、小さな植込があって、その四つ目垣のなかの細い樹々は、しょっちゅう町の埃をかぶるので、真白になっていた。
その上、熊は二ひきとも三メートルばかりの身のたけで、重さが百五十キロ以上でしたから、これも優劣なしでした。
熊捕り競争 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
松五郎は何か無いかと四辺あたりをキョロ/\探すと、巻手まきてと申しまする何か機織道具で、たけ二尺ばかり厚み一寸も有ります巻手と云うものを取って打って掛る。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
またその身にこけまた檜榲ひすぎ生ひ、そのたけたに八谷を度りて、その腹を見れば、悉に常に垂りただれたり
今ここへ駈け込んで来た人は、身のたけおよそ七尺もあろうかと思われるあから顔の大男で、黄牛あめうしの皮鎧に真っ黒な鉄の兜をかぶって、手には大きいまさかりを持っていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
たけなる髪をうしろに結びて、りたるきぬへたる帯、やつれたりとも美貌びばうとはが目にも許すべし。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
幼帝が温徳殿うんとくでんに出御なされると、にわかに、狂風がふいて、たけ二丈余の青蛇が、はりから帝の椅子のそばに落ちてきた。帝はきゃっと、床にたおれて気を失われてしまった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
花賣に扮したる娘は猶四五尺許なるとうの竿に蝋燭幾本か束ねたるを着けて高くかざせり。彼の紛※てふき結びたる竿のたけ足らで、我火をえ消さざるを見て、娘は嬉し氣に笑ひぬ。
三十尺の高さに噴き上げている水と蒸気を止めるために大勢の人夫が骨を折ってたけげん
箱根熱海バス紀行 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
種々にたゞされける所さしも世にとゞろ明奉行めいぶぎやうの吟味故其言葉そのことば肺肝はいかん見透みすかす如くにて流石さすがの平左衞門も申掠る事能はずと雖も奸智かんちたけたる曲者くせものゆゑたちまち答への趣意を變じて其身のつみ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
この熱情とこの親切とがあってあれだけの門下を養成し、多数の硯友社員を一身同体の如くに率いて活動する事が出来たのであろう。紅葉はたしかに人にたけたる親分的性格をっていた。
左程大くはないと云ってもたけ六尺はあるふきや、三尺も伸びたよもぎ、自然生の松葉独活アスパラガス、馬の尾についてえると云う山牛蒡、反魂香と云う七つ葉なぞが茂って居る川沿いのこみちを通って
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
燐寸箱! 然だ、燐寸箱だよ、まつたく。狹くて、狹くて、全然まるつきり身動きがならん。のみだつて君、自由にねられやせんのだ。一寸何分とたけきまつた奴許りが、ギッシリとつめ込んである。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
たけなす髪を二つに分けてつのに作り、顔に朱をさし、身にたんを塗り、鉄輪かなわをいただいてその三つの足に松をともし、松明たいまつをこしらえて、両方に火をつけ、口にくわえて、夜更け人定まって後
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
満枝は如何なる人かとちらと見るに、白髪交しらがまじりのひげは長く胸のあたりに垂れて、篤実の面貌痩おもざしやせたれどもいやしからず、たけは高しとにあらねど、もとよりゆたかにもあらざりし肉のおのづかよはひおとろへに削れたれば
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
詩仏しぶつ鵬斎ぼうさい詩文しぶんにてなぶりものにされたりといふことえたるが、もとより菊塢きくう世才せさいにはたけたれど学文がくもんはなし、詩仏しぶつ鵬斎ぼうさい蜀山しよくさん真顔まがほかげ春海はるみ当時そのころ聞人もんじん幇間半分たいこはんぶんなぶり者にせられしには相違さうゐなし
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ことよそほひのたけすがた、童男をぐなのひとり
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
たけ高き法し見らるゝ競馬かな 草籬
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
ふとゆれぬ、たけ振袖ふりそで
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
身ノたけ 数千里
自烈亭 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
長さが一尺ばかりだから男でもチョン髷にいって居る髪の毛は是だけのたけは有るが今時の事だから男は縮毛ならかって仕舞うからないのは幾等いくらか髪の毛自慢の心が有る奴だ男で縮れっ毛のチョン髷と云うのは無い(大)爾々そう/\縮れッ毛は殊に散髪にもって来いだから縮れッ毛なら必ず剪て仕舞う本統に君の目は凄いネ(谷)爾すれば是は
無惨 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
アマゾン辺の民一汎いっぱんに信ずるはマイダゴア(水の母また精)とてたけ数百フィートの怪蛇あり、前後次第して河の諸部に現わると。
ウロコヲカズイテ生出おいいでた、たけしゃくの鬼が出ようかと、あせを流して聞いている内、月チト暗カリケル処ニテ、仁右衛門が出て行った。まず、よし。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
たけ八尺ばかりな女の屍骸しがいを、山中において見た者がある。髪は長くして足に至り、口は耳のあたりまで裂け、目も普通よりは大なりと記している。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
やがて籬も、たけの低い樫の林もとほり過ぎた。木立のあひだを縫ふやうに小径がうねつて原へ通じてゐる。どうやら、くだんの小径らしい。果して原つぱへ出た。
しかし幅広くたけつまつた文字が、石を積むが如くに重畳してあつて、極て読み易い。文中「何角は差上度」は読んで「何か差上度」とすべきである。或は方言歟。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
董花すみれのかほり高きほとりおほはざる柩の裏に、うづたか花瓣はなびらの紫に埋もれたるかばねこそあれ。たけなる黒髮をぬかわがねて、これにも一束の菫花を揷めり。是れ瞑目せるマリアなりき。
六人が橋を渡って行く、河風が吹き上げて来たからでもあろう、身のたけの高い儒者ふうの老人の、編笠を洩れた長髪が、二、三度斜めになびいたが、それさえ気高く思われた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たけなるかみをうしろにむすびて、ふりたるきぬになえたるおびやつれたりとも美貌びばうとはにもゆるすべし、あはれ果敢はかなき塵塚ちりづかなか運命うんめいてりとも、きたなよごれはかうむらじとおもへる
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いろと水齒別みづはわけの命、多治比たぢひ柴垣しばかきの宮にましまして、天の下治らしめしき。天皇、御身みみたけ九尺二寸半ここのさかまりふたきいつきだ。御齒の長さ一、廣さ二きだ。上下等しくととのひて、既に珠をけるが如くなりき。
ぞ掛たりけるやがて引立られし長庵が心の内には驚怖おどろけども奸惡かんあくたけ曲者くせものなれば何の調べか知ねども我がした惡事はみな無證據むしようこ何樣なにやうに吟味筋が有るにもせよ此長庵が舌頭ぜつとうにて左りをたゞせば右へぬけ右を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
狭くて、狭くて、全然まるで身動きがならん。蚤だつて君、自由に跳ねられやせんのだ。一寸何分とたけきまツた奴許りが、ギツシリとつめ込んである。僕の様なもんでも、今迄何回反逆を企てたか解らん。
漂泊 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
で、血が動けば氣が動くから、血行が常時より疾くなれば、血が上り、たかぶり、たけり、強まるし、血行が遲くなれば、氣が下り、沈み、かじけ、弱る。氣が動けば血が動くから、怒れば血行は疾くなる。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
入学証書と云ったような幅一尺五寸たけ二尺ほどの紙に大きな活字で皇帝や総長の名を黒々と印刷したものを貰ったが文句はラテン語で何の事か分らない、見ていると気の遠くなるようなものであった。
ベルリン大学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
くに兄姫えびめたけすがた、富士ふじこそへれ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
大きさ柱のごとくしてたけただ二尺余、その行くや跳び躍る、逢々として声あり、人をし立ちどころに死す〉とあると同物だろうという。
次に七十二三の老婆、世に消残るかしらの雪の泥塗どろまみれにならんとするまで、いたく腰の曲りたるは、杖のたけの一尺なるにて知れかし。うがごとくに、よぼよぼ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其声を知るべに谷を下りて打見やりたるに、身のたけ七八尺ばかりの大男二人、岩根のこけを摘み取る様子なり。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ななかまどと接骨木にわとこの木だけの、たけの低い小さな庭があって、その叢みの奥に、柿板こけら葺きの木造の小舎がかくれており、擦ガラス入りの小さな窓が一つ見えていた。
此処の内儀が目の前にうかびたる形は、横巾ひろくたけつまりし顔に、目鼻だちはまづくもあるまじけれど、びんうすくして首筋くつきりとせず、胴よりは足の長い女とおぼゆると言ふ
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此書院に古画幅を掛たり。広一尺一二寸たけ三尺許装潢もふるし。一人物きんを頂ききうたり。舟に坐して柳下に釣る。欵なし。筆迹松花堂様の少く重きもの也。寺僧浦島子うらしまがこかたなりといふ。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
上衣うわぎっても下衣に裁っても十分用に足りるだけの幅もたけもあったけれど、不思議のことにはその紅巾はせみの羽根のように薄いところから、てのひらの中へ握られるほどにまた小さくもなるのであった。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
たけすぐれたる山祇やまつみ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)