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さかだる
ふりがな文庫
“
酒樽
(
さかだる
)” の例文
肉襦袢
(
にくじゅばん
)
の上に、
紫繻子
(
むらさきじゅす
)
に金糸でふち取りをした
猿股
(
さるまた
)
をはいた男が、鏡を抜いた
酒樽
(
さかだる
)
の前に立ちはだかって、妙に優しい声で
云
(
い
)
った。
踊る一寸法師
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
しかし最も奇抜なのは
呑口会社
(
のみぐちがいしゃ
)
の計画で、これは
酒樽
(
さかだる
)
の呑口を作る職人が東京にごく少ないというところから思いついたのだそうだが
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
砂の上には、酒のからびんがごろごろころがり、
酒樽
(
さかだる
)
には穴があいて、そこからきいろい酒が砂の上へたらたらとこぼれている。
恐竜島
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
正面に
盛切
(
もっき
)
りの台が拭きこんであって、真白な塩がパイスケに山盛りになって、二ツ三ツの
酒樽
(
さかだる
)
と横に
角樽
(
つのだる
)
が飾ってある店だ。
旧聞日本橋:14 西洋の唐茄子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
私と同じ年頃なのに、私はいつも古い
酒樽
(
さかだる
)
の上に腰をかけているきりで、彼女達は、私を見ても一言も声を掛けてはくれない。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
▼ もっと見る
酒屋では、
酒樽
(
さかだる
)
がずらりと
列
(
なら
)
んでゐる、うす暗い酒蔵の中へ案内された。一足はいると、むつと酒の
匂
(
にほ
)
ひが迫つて来た。
良寛物語 手毬と鉢の子
(新字旧仮名)
/
新美南吉
(著)
ひどく酒の
醗酵
(
はっこう
)
する
香
(
におい
)
がすると思うと、そこは山役人の食料や調度の物を入れておく納屋らしく、裏の土間に、
咽
(
む
)
せるばかりな
酒樽
(
さかだる
)
が積んである。
鳴門秘帖:03 木曾の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒樽
(
さかだる
)
が転がっている。油紙に包んだ肉のようなものがぶら下っている。埃だらけな棚の上にも
酒壜
(
さけびん
)
が並んでいる——。
秘境の日輪旗
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
米屋は米の俵を、八百屋は一と籠の野菜を、魚屋は盤台二つに魚を、酒屋は五升入りの
酒樽
(
さかだる
)
に味噌醤油を、そして菓子屋のあとから大量の薪と炭など。
雨あがる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おさやんの家は酒屋でした。なつかしい、気の
好
(
い
)
い遊び相手だつたおさやんを思ひますとまづ目に山のやうに高い大きい
酒樽
(
さかだる
)
の並んだ
幻影
(
まばろし
)
が見えます。
私の生ひ立ち
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
酒場の入り口階段の傍には一台の荷馬車が立っていたが、奇体な荷馬車である。それは大きな
挽馬
(
ひきうま
)
をつけて、荷物や
酒樽
(
さかだる
)
を運ぶ大型な荷馬車の一つである。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
自由で自分の意志を確信してるクリストフは、
挑発
(
ちょうはつ
)
的な興味で、無産者らの同盟を見守っていた。民衆の
酒樽
(
さかだる
)
に浸るのがうれしく、そうすると気が和らいだ。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
大きな
酒樽
(
さかだる
)
にどっさり大根が
漬
(
つ
)
けられてあって、大嫌いな
糠味噌
(
ぬかみそ
)
の臭いが鼻を襲って
逆吐
(
むかつ
)
きそうになった。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
さまざま駄々をこねて居たようですが、どうにか落ち附き、三島の町はずれに小ぢんまりした家を持ち、兄さんの家の
酒樽
(
さかだる
)
を店に並べ、酒の小売を始めたのです。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
試みに豊国の
酒樽
(
さかだる
)
を踏み台にして桜の枝につかまった女と、これによく似た
春信
(
はるのぶ
)
の
傘
(
かさ
)
をさして風に吹かれる女とを比較してみればすべてが
明瞭
(
めいりょう
)
になりはしないか。
浮世絵の曲線
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
官蔵、伴助、宅悦の三人は、長兵衛に促されて手拭で小平に猿轡をはめ、まず
鬢
(
びん
)
の毛を脱いた。其の時門口へお梅の乳母のお槇が、中間に
酒樽
(
さかだる
)
と
重詰
(
じゅうづめ
)
を持たして来た。
南北の東海道四谷怪談
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
親父がぴょこぴょこお辞儀をして、
酒樽
(
さかだる
)
の鏡を抜いて
馳走
(
ちそう
)
をしたもんだから、拍子抜がして素直に帰って行きゃあがった。ところが二三日するとまた遣って来やがった。
里芋の芽と不動の目
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
丁度土間には
筵
(
むしろ
)
が敷いてあり、秋の陽が一パイに射して居りました。
酒樽
(
さかだる
)
の匂ひがして、十二年前のあの日と、そつくりそのまゝの心持だつたと——後でお才が言ひます
銭形平次捕物控:331 花嫁の幻想
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
その他この町で作る漆器の仏具や、祝いの時に用いる
酒樽
(
さかだる
)
などにも塗や形のよいのを見かけます。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
小さい
頼母子
(
たのもし
)
を結んでそれを
資
(
もとで
)
に始めたのが米と酒を売る店であった。仕事場を改造してだだっぴろい店ができた。
米俵
(
こめだわら
)
と
酒樽
(
さかだる
)
が景気よく並び、皆を豊かな気持にさせた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
ずいとはいり込むと、客が一人、
酒樽
(
さかだる
)
に腰を掛けて、
老爺
(
おやじ
)
を相手に盛んに弁じ立てている。
つづれ烏羽玉
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
そこの角は河合という土蔵造りの立派な酒屋で、突当りが帳場で、
土間
(
どま
)
の両側には
薦被
(
こもかぶ
)
りの
酒樽
(
さかだる
)
の
飲口
(
のみぐち
)
を附けたのが、ずらりと並んでいました。主人は太って品のいい人でした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
それぞれ出来る限りのごちそうをこしらえ、赤の御飯をたき、金持ちは大きな
酒樽
(
さかだる
)
まで買ってきて、まず第一に鎮守様に
供
(
そな
)
え、それから、皆で、飲んだり食べたり歌ったりしました。
ひでり狐
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
半分に切った
酒樽
(
さかだる
)
の中で、ルノワアルとルグリは、毛皮で温かく足をくるんだまま、
牝牛
(
めうし
)
のように食う。彼らはたった一度食事をするだけだが、その食事が一日じゅう続くのである。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「
菓子
(
くわし
)
なんぞまた
盜
(
と
)
つちや
畢
(
を
)
へねえぞ、うむ、そつちの
方
(
はう
)
の
酒樽
(
さかだる
)
ん
處
(
とこ
)
にも
立
(
た
)
つてゝ
飮
(
の
)
み
口
(
ぐち
)
でも
引
(
ひ
)
つこ
拔
(
ぬ
)
かねえで
貰
(
もら
)
あべえぞ、みんな」と
痘痕
(
あばた
)
の
爺
(
ぢい
)
さんは
獨
(
ひと
)
り
乘地
(
のりぢ
)
に
成
(
な
)
つていふのであつた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
棒鱈
(
ぼうだら
)
乾鮭
(
からざけ
)
堆
(
うずたか
)
く、
片荷
(
かたに
)
に
酒樽
(
さかだる
)
を積みたる
蘆毛
(
あしげ
)
の
駒
(
こま
)
の、紫なる
古手綱
(
ふるたづな
)
を
曳
(
ひ
)
いて
出
(
い
)
づ
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
川すじや海の上では材木に大きく
伊勢木
(
いせぎ
)
と書いて、山から流したものがよく浮いている。あるいは
酒樽
(
さかだる
)
に
奉納住吉大明神
(
ほうのうすみよしだいみょうじん
)
、または
金毘羅大権現宝前
(
こんぴらだいごんげんほうぜん
)
と書いたのを、海で船頭がひろい上げることもある。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ああ
喉
(
のど
)
がかわいた。諸君、僕には一つの望みがあるんだ。ハイデルベルヒの
酒樽
(
さかだる
)
が中気にかかって、
蛭
(
ひる
)
を十二匹ばかりそれにあてがってやりたいというんだ。僕は酒が飲みたい。僕は人生を忘れたい。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
聞ても無い/\と計り云は奇怪なり
大方
(
おほかた
)
酒
(
さけ
)
もあるに相違あるまじと云つゝ
武士
(
さふらひ
)
はづか/\と
立寄
(
たちよつ
)
て
酒樽
(
さかだる
)
の
呑口
(
のみくち
)
へ
升
(
ます
)
を
宛
(
あて
)
がひヤツと一ト
捻
(
ねぢ
)
り捻りければ酒はどく/\出しゆゑ
汝
(
おのれ
)
是
(
これ
)
ほど澤山酒もあるものを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
到頭馬弐駄に
酒樽
(
さかだる
)
をつけて、やっと厄介な田を譲った。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
酒樽
(
さかだる
)
だ
赤い旗
(旧字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
かたがた慰労という意味で、三位卿、
酒樽
(
さかだる
)
の鏡を抜かして、一同の労を多とし、自身も敷物もせず縁先へ座をかまえた。
鳴門秘帖:04 船路の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その日
何処
(
どこ
)
でもしたという
酒樽
(
さかだる
)
のいくつかが、大丸の前にもかがみが抜いて
柄酌
(
ひしゃく
)
がつけて出された。
旧聞日本橋:05 大丸呉服店
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
前夜の夕刊に
青森
(
あおもり
)
県
大鰐
(
おおわに
)
の婚礼の奇風を紹介した写真があって、それに紋付き羽織
袴
(
はかま
)
の男装をした婦人が
酒樽
(
さかだる
)
に付き添って嫁入り行列の先頭に立っている珍妙な姿が写っている。
三斜晶系
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
すでに葡萄酒は
醸
(
かも
)
されていた。それを飲むだけのことだった。飲んだ人々は頭が乱れた。少しも飲まなかった人々でさえ、
酒樽
(
さかだる
)
の
匂
(
にお
)
いを通りがかりに
嗅
(
か
)
いだだけで、
眩暈
(
めまい
)
を覚えた。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
酒樽
(
さかだる
)
が引つくり返つて、
呑口
(
のみくち
)
が飛んだと見えて、店中が酒の
洪水
(
こうずゐ
)
だ、——訊いて見ると、一刻ばかり前、江戸の人が通りかゝつて、
喉
(
のど
)
が
渇
(
かわ
)
くからと、冷で一杯所望し、それを呑むうち
銭形平次捕物控:305 美しき獲物
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
なるほど、小さい
酒樽
(
さかだる
)
であったが、その中にいっぱいはいっていた。
時計屋敷の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
馬車には石灰をつめこんだ
樽
(
たる
)
が三つのっていたので、彼らはそれを下敷きにして
舗石
(
しきいし
)
を積んだ。アンジョーラは
窖
(
あなぐら
)
の揚げ戸を開いた。そしてユシュルー
上
(
かみ
)
さんの
空
(
から
)
の
酒樽
(
さかだる
)
は皆石灰樽の横に並べられた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
酒樽
(
さかだる
)
だ
赤い旗
(旧字旧仮名)
/
槙本楠郎
(著)
急ぎて大坂まで上り此所より
船
(
ふね
)
に乘し
處
(
ところ
)
機
(
をり
)
よく海上も
穩
(
おだや
)
かにて
滯留
(
とゞこほ
)
りなく讃州丸龜へ
到着
(
たうちやく
)
し江戸屋清兵衞と尋ねしに
直樣
(
すぐさま
)
知れければ行て見るに
咄
(
はな
)
しよりも
大層
(
たいそう
)
なる
構
(
かま
)
ひにて間口八間に奧行廿間餘の旅籠屋にて
働
(
はたら
)
き女十二三人見世番料理番の下男七八人又勝手には
菰
(
こも
)
かぶりの
酒樽
(
さかだる
)
七八本を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
と、郡兵衛は、そこに持ち込んで来た
菰
(
こも
)
かぶりの
酒樽
(
さかだる
)
へ目を落して
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「黙れ、
酒樽
(
さかだる
)
めが!」とクールフェーラックは言った。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
史進は、
陶
(
とう
)
の
酒樽
(
さかだる
)
に腰かけていた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
酒
常用漢字
小3
部首:⾣
10画
樽
漢検準1級
部首:⽊
16画
“酒樽”で始まる語句
酒樽人足