護摩ごま)” の例文
私の家の二階の一室には護摩ごま壇が備へてあつて、毎月一、二回その老法印が來て護摩を焚き、不動、慧智の修法を行ふのでありました。
(旧字旧仮名) / 石川三四郎(著)
往返わうへんし旅人の懷中ふところねら護摩ごまはひの頭なり因て半四郎が所持の金に目をかけ樣々さま/″\にして終に道連となりしかば此夜このよ何卒なにとぞして半四郎の胴卷どうまき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「でも他に頼る人もありません。——道尊さんは早速やって来て、護摩ごまいていのってくれましたが、何のしるしもありません」
そして後醍醐には隠岐脱出いらい、いよいよ意気おさかんで、大山だいせんの祈祷の壇に、みずから護摩ごまいて七日の“金輪こんりんほう”を修せられ
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かおの色を変えて、戸を立て切り、明朝あすとも言わずに竜神の社へ駈けつけて、祈祷きとう護摩ごまとを頼むに相違ないのであります。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
床は呪水に濡らされ、身は護摩ごまの煙にいぶさるゝは、これがために非ずや。我知らじとやおもふ、汝はダンテを讀みたるを。
「凶事がある前兆しらせじゃよ、昨夜ゆうべは夢見が悪かった。早速護摩ごまでもかせねばお邸から縊死くびくくりを出してどうするものじゃ。」と令夫人おくさまは大きに担ぐ。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの陰氣な稻荷の巫女みこや、天狗使ひや、(A+B)2 ………などの方程式で怪しい占ひをした漂浪者や、護摩ごまを焚く琵琶法師やを滯留さしては
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
くもあみをむすびて九二諸仏を繋ぎ、燕子つばくらくそ九三護摩ごまゆかをうづみ、九四方丈はうぢやう九五廊房らうばうすべて物すざましく荒れはてぬ。
将門まさかどが乱を起しても護摩ごまいて祈り伏せるつもりでいた位であるし、感情のいと蜘蛛くもの糸ほどに細くなっていたので、あらゆる妄信にへばりついて
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
井戸屋の主人も神仏の信心を怠らず、わざわざ下総しもうさの成田山に参詣して護摩ごまを焚いてもらった。ありがたい守符まもりふだのたぐいが神棚や仏壇に積み重ねられた。
経帷子の秘密 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
一切のからが今はかなぐり捨てられた。護摩ごまの儀式も廃されて、白膠木ぬるでの皮の燃える香気もしない。本殿の奥の厨子ずしの中に長いこと光った大日如来だいにちにょらいの仏像もない。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私は我慢がまんをしていたが、側の者たちがいろいろと気づかって、しきりに芥子焼からしやきなんぞという護摩ごまなども試みさせるのだけれど、一向その効力はないのだった。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
不動様へ護摩ごまを上げてもよろしい。耶蘇教ヤソきょうの信者には無論なる。小野さんは歩きながら神の必要を感じた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
烏芻沙摩変成男子うすさまへんじょうなんしの法、五大虚空蔵、六観音、六字訶臨訶利帝母かりんかりていも、八字文殊普賢延命ふげんえんみょう護摩ごまの煙りを内苑に満たせ、振鈴しんれいの音を掖殿えきでんに響かせ、祈り立て祈り立てしている筈じゃ。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とにかく生徒を護摩ごまかすくらいは何とも思わぬはずの彼がその時だけはまっ赤になったのである。生徒は勿論もちろん何も知らずにまじまじ彼の顔を眺めていた。彼はもう一度時計を見た。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
門前町と言ふほどではないが、一時は両側に人家が並んで、参詣者さんけいしやがかなり遠い処からやつて来た。やれ護摩ごまをたけの、やれ蝋燭らふそくを呉れのと言つて、かれも慈雲も忙しい思ひをした。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「下級の長脇差」というのは、博奕打の悪いの、三下奴とでもいうような心持で書いたんでしょうが、博奕打は博奕打としておのずから別のもので、護摩ごまの灰や追剥を働くものとは違う。
中里介山の『大菩薩峠』 (新字新仮名) / 三田村鳶魚(著)
そういうところを通りぬけ、玉川に掛っている無明むみょうの橋を渡って、奥の院にまいり、先祖代々の霊のために、さかんに然える護摩ごまの火に一燈いっとうを献じた。これは自身の諸悪業しょあくごうをたやすためでもある。
仏法僧鳥 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
文「はゝア、彼奴あいつたとえにいう護摩ごまはいか、よし/\承知した」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
着た衣服などにも祈りの僧が護摩ごまんでいた。
源氏物語:09 葵 (新字新仮名) / 紫式部(著)
「でも他に頼る人もありません。——道尊さんは早速やつて來て、護摩ごまいていのつてくれましたが、何のしるしもありません」
すなわち、宮中深きところに、秘勅の壇を構え、昼夜、護摩ごまを焚き、あぶら汗もりんりと、顔も焔にして、誦経ずきょう、振鈴の精魂しょうこんこめた修法僧は
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひやうに曰此護摩刀ごまたうのことは柴刀さいたうとも申よしこれは聖護院三寶院の宮樣みやさま山入やまいりせつ諸國の修驗しゆけん先供さきどもの節しば切拂きりはらひ護摩ごま場所ばしよこしらへる故に是を柴刀さいたうとも云なり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
人形使 されば、この土地の人たちはじめ、諸国から入込いりこんだ講中こうじゅうがな、ばば媽々かかあじい、孫、真黒まっくろで、とんとはや護摩ごまの煙が渦を巻いているような騒ぎだ。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
吾子が受領すべきは、くろき衣と大なる帽となり。かくて後は、護摩ごま焚きて神に仕ふべきか、いばらの道を走るべきか。そはかれが運命に任せてむ、とのたまふ。
だから将門が火の手をあげると、八箇国はべた/\となつて、京では七斛余こくよ芥子けしを調伏祈祷の護摩ごまいて、将門の頓死屯滅とんしとんめつを祈らせたと云伝いひつたへられて居る。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
七兵衛は、高尾山の飯綱権現いいづなごんげんを信仰して、時々おまいりをしては護摩ごまを焚いてくることがある。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
月に一遍ずつ蠣殼町かきがらちょう水天宮様すいてんぐうさまと深川の不動様へ御参りをして、護摩ごまでも上げたかった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白膠木ぬるでの皮の燃える香気と共に、護摩ごまの儀式が、やがてこの霊場を荘厳にした。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さういふところを通りぬけ、玉川に掛つてゐる無明むみやうの橋を渡つて、奥の院にまゐり、先祖代々の霊のために、さかんに燃える護摩ごまの火に一燈を献じた。これは自身の諸悪業あくごふをたやすためでもある。
仏法僧鳥 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
勿体もったいなさ——今になって考えましても、しとみに迷っている、護摩ごまけぶりと、右往左往に泣き惑っている女房たちの袴のあけとが、あの茫然とした験者げんざや術師たちの姿と一しょに、ありありと眼に浮かんで
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
護摩ごまき修し、伴天連ばてれんすくひよぶとも
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
館の大廂おおびさしからは護摩ごまの煙が雲のように立ちのぼり、衆僧の振鈴しんれい誦経ずきょうが異様な喚叫かんきょうをなして二条の町かどあたりまでも聞えてくるほどだった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
遠方の小さいかすかな茅屋を包んだ一むら竹の奥深く、山はその麓なりに咲込んだ映山紅につ半ば濃い陽炎かげろうのかかったのも里親しき護摩ごまの燃ゆる姿であった。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怨みに燃えるような声は、ツイ鼻の先の破れ障子の中から、護摩ごまく凄まじい煙とともに湧き起るのでした。
浪人夫婦は聞て大いに驚き然すれば渠等かれらかねて聞たる護摩ごまはひとか云へる惡漢わるものならん是は如何せんと當惑たうわくの折から一人の駕籠舁は彼浪人かのらうにんに向ひオイ御侍士おさふらひ先刻さつき熊谷の茶屋から四里八丁の丁場ちやうば
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その当座は多くの婦人の中に交わって、お絹も殊勝に護摩ごまの席に連なる。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
護摩ごまかすんですね。……
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのかん、大塔の本堂では、老僧以下あまたな僧が護摩ごまの壇をめぐッて、日々、未明から暮夜ぼやまで、交代に読経の座を占めたまま、うごかなかった。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
堂に着いて見ると、中は一面の護摩ごまの煙、本尊の前に堂守の優曇法印は、揉に揉んで祈っている最中でした。
の年、霜月しもつき十日は、かねて深く思召おぼしめし立つ事があつて、大納言卿、わたくしならぬ祈願のため、御館の密室にこもつて、護摩ごまの法をしゅせられた、其の結願けちがんの日であつた。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このため、護摩ごまの煙は御所中にもうもうと立ちこめ、振る鈴の音は地を這い天にまでのぼる始末、修法の声は身の毛もよだつようにとどろく有様で、これでは、どんな物の怪も退散すると思われた。
「大層あらたかな道者だって言うじゃないか。やっぱり法螺ほらの貝を吹いたり、護摩ごまいたりするのかい」
呪詛じゅその壇をしつらえて、日々夜々、山伏の群れが、念仏滅亡、上人しょうにん調伏の護摩ごまき、精と根のあらんかぎり、親鸞を呪殺じゅさつせずばおかぬといっているそうでございます
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その捻平はしにさっしゃい、人聞きが悪うてならん。道づれはけれども、道中松並木で出来たと言うで、何とやら、その、わし護摩ごまの灰ででもあるように聞えるじゃ。」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
怨に燃えるやうな聲は、ツイ鼻の先の破れ障子の中から、護摩ごますさまじい煙と共にき起るのでした。
緋衣ひごろもの大僧正は、壇へ向って護摩ごまいていた。下には具足した信玄の体は肩も腰も丸く見える。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……三嶋の宿で護摩ごまの灰に胴巻を抜かれたあとの、あわれはここに弥次郎兵衛、のまず、くわずのまず、竹杖にひょろひょろと海道を辿りながら、飛脚が威勢よく飛ぶのを見て
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
護摩ごまけむり濛々もう/\と壇をこめて、東海坊の素晴らしい次低音バリトーンだけが、凛々りん/\と響き渡るのです。やがて