こげ)” の例文
彦「御隠居さま、長らく御不快でさぞお困りでしょう、今おまんまを炊いた処が、こげが出来たから塩握飯しおむすびにして来ましたからおあがんなさい」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
従祖父おおおじ平田将監ひらたしょうげん様の眼は、こげ茶色をしていて凄かったといういい伝えだから、おまえはおそらくお祖父じいさん似に生れたのであろう……と。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
日は代助の頭の上から真直に射下いおろした。乾いたほこりが、火の粉の様に彼の素足を包んだ。彼はじりじりとこげる心持がした。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
車を横に押し親父おやじを勘当しても女房に持つ覚悟めて目出度めでたく婚礼して見ると自分の妄像もうぞうほど真物ほんものは面白からず、領脚えりあし坊主ぼうずで、乳の下に焼芋のこげようあざあらわれ
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
勘次かんじあついのでこん襦袢じゆばんこしのあたりへだらりとこかして、こげたやうな肌膚はだをさらけしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
身動みうごきもせずじつとして兩足をくんすわつてると、その吹渡ふきわた生温なまぬくいかぜと、半分こげた芭蕉の實や眞黄色まつきいろじゆくした柑橙だい/\かほりにあてられて、とけゆくばかりになつてたのである。
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ここぞと、心もこげつくような、紅梅焼の前を通過とおりすぎて、左側、銀花堂といいましたか、花簪はなかんざしの前あたりで、何心なく振向くと、つい其処、ついうしろに、ああ、あの、その艶麗えんれいな。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
このまま薄く切ってロースのようにしても食べられますが丁寧ていねいにすれば別の鍋へバターを溶かしてメリケン粉を入れて杓子しゃくしわしながら色の黒くこげるまでよくよくいためて
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
火脉くわみやく気息いき人間にんげん日用にちよう陽火ほんのひくはふればもえてほのほをなす、これを陰火いんくわといひ寒火かんくわといふ。寒火をひくかけひつゝこげざるは、火脉の気いまだ陽火をうけて火とならざる気息いきばかりなるゆゑ也。
残飯が上等百二十匁一銭、おこげ百七十匁一銭、残菜一人一度分一厘、残汁同上二厘、だいたい残飯生活の一人当りは六銭ですんだというが、残飯にきりかえても雨の日はまかなえきれない。
蟇のこゑ野天のてんにひびくひるちかくこげいろの風も麥あふり吹く
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
番「何じゃ、おのれが出る幕じゃアない、汝は飯炊めしたきだから台所に引込ひっこんで、飯のこげぬように気を附けてれ、此様こないな事に口出しをせぬでもいわ」
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こげくさくて土の交じっているような塩気のうすい味噌汁だ。だが、何か実もはいっている。夢中でふウふウすすっていた兵隊も、意外な汁のに出会って一層どよめいた。
日本名婦伝:谷干城夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
代助はあつなかけないばかりに、いそぎ足にあるいた。は代助のあたまの上から真直まつすぐに射おろした。かはいたほこりが、火のの様にかれ素足すあしつゝんだ。かれはぢり/\とこげる心持がした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なべなかすこしぷんとこげつくにほひがした。かれはお玉杓子たまじやくしてた。なべそこうごかすごとにぢり/\とつた。かれわづかあつ雜炊ざふすゐ食道しよくだう通過つうくわしてちつくときほかりとかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だから無暗むやみと鼻をぴくぴくさしてうしこげにおいいであるく、その醜体ざまったらない!
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
蟇のこゑ野天のてんにひびくひるちかくこげいろの風も麦あふり吹く
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
鉾杉の春のこげいろよろしみと眺め見あかず谿岨たにそばのぼる
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
こげる/\」とあるきながらくちうちで云つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)