トップ
>
無沙汰
>
ぶさた
ふりがな文庫
“
無沙汰
(
ぶさた
)” の例文
寛斎は半蔵から王滝行きを思い立ったことを聞いて、あまり邪魔すまいと言ったが、さすがに長い
無沙汰
(
ぶさた
)
のあとで、いろいろ話が出る。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ひどく手持ち
無沙汰
(
ぶさた
)
らしく、その上茶を勧めたり菓子を出したりして、沈黙の時間を埋めることを心懸けているように見えた。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
お金は、すっかり片づけて来て、兄の前にぴったりと平ったく座ると、急にあらたまった口調で、
無沙汰
(
ぶさた
)
の詫やら、お節の様子などを尋ねた。
栄蔵の死
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
筆を取り上げた彼女は、例の通り時候の
挨拶
(
あいさつ
)
から始めて、
無沙汰
(
ぶさた
)
の申し訳までを器械的に書き
了
(
おわ
)
った後で、しばらく考えた。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
この手紙は私のことばかり書きましたが、それは久しく
無沙汰
(
ぶさた
)
したので私の様子を知りたいとあなたがたが思っていて下さると考えたからでした。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
▼ もっと見る
かねてから考えている著書を早く書き初めなければならぬと思う事もある。あるいは郷里の不幸や
親戚
(
しんせき
)
に
無沙汰
(
ぶさた
)
をしている事を思い出す事もある。
丸善と三越
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「これやあ一つ、
無沙汰
(
ぶさた
)
の親類どもや、同僚どもを、
一夕
(
いっせき
)
招
(
よ
)
んで、祝いをせにゃなるまいとわしは思う。なあ、半蔵殿」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「やあ、
暫
(
しばら
)
く! 大へん御
無沙汰
(
ぶさた
)
しちまって、———どうです河合さん、近頃さっぱりダンスにお見えになりませんね」
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
わたしは突然銀座通りで小半の彩牋堂を去った由を知るやおのれが
無沙汰
(
ぶさた
)
は打忘れただ事の次第を
訝
(
いぶか
)
ったのであった。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
遣はし其後源八が
遊
(
あそび
)
に來りし時皆々
折目高
(
をりめだか
)
に
待遇
(
もてなし
)
ける故源八は
手持
(
てもち
)
無沙汰
(
ぶさた
)
に
悄々
(
すご/\
)
と立歸り是は彼の文の事を兩親の知りし故なりと
深
(
ふか
)
く
遺恨
(
ゐこん
)
に
思
(
おも
)
ひけり
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
十太夫の
無沙汰
(
ぶさた
)
はさらに十日ちかくも続き、それから或る日、例のように突然、稽古着のままとびこんで来た。
饒舌りすぎる
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
またこういう事も有る※前のように慾張ッた
談話
(
はなし
)
で両人は夢中になッている※お勢は退屈やら、手持
無沙汰
(
ぶさた
)
やら、いびつに坐りてみたり、
危坐
(
かしこま
)
ッてみたり。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
美奈子と、青年とは部屋に帰ったものの、手持
無沙汰
(
ぶさた
)
に、ボンヤリとして、暮れて行く夕暮の空に対していた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
支那語
(
しなご
)
の
達者
(
たつしや
)
な
友人
(
いうじん
)
は
早速
(
さつそく
)
笑
(
わら
)
ひ
聲
(
ごゑ
)
を
交
(
まじ
)
へながら
女
(
をんな
)
と
何
(
なに
)
やら
話
(
はな
)
しはじめたが、
僕
(
ぼく
)
は
至極
(
しごく
)
手持
(
ても
)
ち
無沙汰
(
ぶさた
)
である。
麻雀を語る
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
私
(
わし
)
もちっと冷える気味でこちらへ
無沙汰
(
ぶさた
)
をしたで、また心ゆかしに
廓
(
くるわ
)
を一
廻
(
まわり
)
、それから例の
箕
(
み
)
の
輪
(
わ
)
へ行って、どうせ
苔
(
こけ
)
の下じゃあろうけれど、ぶッつかり放題
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「ハイ、御蔭様で別状も無いやうですが——私も久しく
無沙汰
(
ぶさた
)
致しましたから、一寸見舞にと思ひまして」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「あなたがあんまりご
無沙汰
(
ぶさた
)
をしていらっしゃるから、呼び出して
切腹
(
せっぷく
)
仰
(
おお
)
せつけるのかもしれませんよ」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
そのときおばさんがお茶を
淹
(
い
)
れて持ってきた。そしてあらためて私に
無沙汰
(
ぶさた
)
の
詫
(
わ
)
びやら、手みやげのお礼などいい出した。無口なおじさんも急にいずまいを改めた。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
用事もないものですから
無沙汰
(
ぶさた
)
をしているうちに月日がたつということもこの世の悲しみです。
源氏物語:35 若菜(下)
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
彼はこの若者を見たことがない、民さんは
無沙汰
(
ぶさた
)
をわび、仕事を出してもらえた礼をいった。
生涯の垣根
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
つづけていただきたいと思います。それで今までのご
無沙汰
(
ぶさた
)
のお
詫
(
わ
)
びながらに伺ったのです。ねえ、ゆるして下さいな。やっぱりあなたは私のいちばん好きなお友達なのですから
世界怪談名作集:07 ヴィール夫人の亡霊
(新字新仮名)
/
ダニエル・デフォー
(著)
さすがに
犇
(
ひし
)
めいてはいるが、早急に討手の人馬が、城外へ押し出す様子は更になかった。宮内は手持ち
無沙汰
(
ぶさた
)
になって、ただうろうろと、その辺を歩く外にすることがなかった。
討たせてやらぬ敵討
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
「そりゃそうですとも、作る以上は完全なものにしたいのは私も同じことじゃありますが、計算までここでやってるんじゃ、私は手持
無沙汰
(
ぶさた
)
で、まどろっこしくって困りますよ」
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
先生はじっと砂の表面に見入りながら、急に黙り込んで
何時
(
いつ
)
までも箱の側面を引いたり押したりしておられた。皆もちょっと手持
無沙汰
(
ぶさた
)
な
恰好
(
かっこう
)
で砂の割れ目を
怪訝
(
けげん
)
そうに見ていた。
寺田先生の追憶:――大学卒業前後の思い出――
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
私
(
わっち
)
の方で金をくれろと云ったわけじゃアありません、お
前
(
めえ
)
さんの方で懇意ずくになって金を貸すと云うから借りようと云うのだが、又亭主に
無沙汰
(
ぶさた
)
で人の女房を
打
(
ぶ
)
って済みますかえ
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
無骨
(
ぶこつ
)
一
遍
(
ぺん
)
律義
(
りつぎ
)
男
(
をとこ
)
の
身
(
み
)
を
忘
(
わす
)
れての
介抱
(
かいほう
)
人
(
ひと
)
の
目
(
め
)
にあやしく、しのびやかの
咡
(
さゝや
)
き
頓
(
やが
)
て
無沙汰
(
ぶさた
)
に
成
(
な
)
るぞかし、
隱
(
かく
)
れの
方
(
かた
)
の六
疊
(
でう
)
をば
人
(
ひと
)
奧樣
(
おくさま
)
の
癪
(
しやく
)
部屋
(
べや
)
と
名付
(
なづ
)
けて、
亂行
(
らんげう
)
あさましきやうに
取
(
とり
)
なせば
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
七蔵
(
しちぞう
)
衣装
(
いしょう
)
立派に着飾りて顔付高慢くさく、
無沙汰
(
ぶさた
)
謝
(
わび
)
るにはあらで誇り
気
(
げ
)
に今の身となりし本末を語り、
女房
(
にょうぼう
)
に都見物
致
(
いた
)
させかた/″\
御近付
(
おちかづき
)
に
連
(
つれ
)
て参ったと
鷹風
(
おおふう
)
なる言葉の尾につきて
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
北村
三唖
(
さんあ
)
が紅葉に
疎
(
うと
)
んぜられたのも、初めは何かの用事で暫らく
無沙汰
(
ぶさた
)
をした時
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
ベリヤーエフは手持ち
無沙汰
(
ぶさた
)
だったので、アリョーシャの顔を眺めはじめた。
小波瀾
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
(手持
無沙汰
(
ぶさた
)
に、ほとんど恐る恐る。)マッシャ。この花はお前に
遣
(
や
)
る。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
由
(
よし
)
ないことに私が好奇心を起してほじくり立てていたばっかりに話はそれからそれへと岐路に飛んで、さっきからシャアやジャヴェリは手持
無沙汰
(
ぶさた
)
そうに床の間の置物なぞに眼を移していたが
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
善兵衛は不平らしく手持
無沙汰
(
ぶさた
)
に控えた、娘の一身安危の場合に杖とも頼む春日が、機敏に□□市へ急行して
呉
(
く
)
れると思いの外、愚にもつかぬ方を調べているのに業を煮し、早やその手腕をさえ疑い
誘拐者
(新字新仮名)
/
山下利三郎
(著)
庸三は手持
無沙汰
(
ぶさた
)
ではなかった。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
彼は久しぶりに
訪
(
たず
)
ねたいと思う人も多く、
無沙汰
(
ぶさた
)
になった家々をもおとずれたく、日ごろ彼の家に出入りする百姓らの
住居
(
すまい
)
をも見て回りたく
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
彼はその日
無沙汰
(
ぶさた
)
見舞かたがた
市ヶ谷
(
いちがや
)
の
薬王寺
(
やくおうじ
)
前にいる兄の
宅
(
うち
)
へも寄って、島田の事を
訊
(
き
)
いて見ようかと考えていたが、時間の遅くなったのと
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
二人の娘に対しての
無沙汰
(
ぶさた
)
がいつも彼は気がゝりであつた。
素気
(
そっけ
)
ない
此頃
(
このごろ
)
の父に対する二人の娘の思はくが一通りならぬ彼のなやみの種であつた。
老主の一時期
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
御牧は悦子が大人たちの中に交ってぼんやりしているのにも心を遣って、時々愛想を云いに来たが、その実悦子はそんなに手持
無沙汰
(
ぶさた
)
ではなかった。
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
諸処方々
無沙汰
(
ぶさた
)
の不義理重なり中には二度と顔向けさへならぬ処も
有之
(
これあり
)
候ほどなれば何とぞ礼節をわきまへぬは文人
無頼
(
ぶらい
)
の常と御寛容のほど
幾重
(
いくえ
)
にも
奉願上
(
ねがいあげたてまつり
)
候。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
ト云いながらお勢は
起上
(
たちあが
)
ッて、二階を降りてしまッた。跡には
両人
(
ふたり
)
の者が、
暫
(
しば
)
らく手持
無沙汰
(
ぶさた
)
と云う気味で
黙然
(
もくぜん
)
としていたが、やがて文三は厭に落着いた声で
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
すぐにまた、廃藩置県の調べで、ご議事の間の出張員を拝命したので、地方を巡視いたし、席のあたたまる間もない忙しさのため、思わず今日までご
無沙汰
(
ぶさた
)
をしました
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
といって
迎
(
むか
)
えてくれた。内藤さんは書面のお礼をのべてご
無沙汰
(
ぶさた
)
のおわびをしたのち
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
己
(
おれ
)
の買おうとしたものを己に
無沙汰
(
ぶさた
)
で価を附けたとか何とかの間違いらしい
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
今夜
(
こんや
)
も
此樣
(
こん
)
な
分
(
わか
)
らぬ
事
(
こと
)
いひ
出
(
だ
)
して
嘸
(
さぞ
)
貴君
(
あなた
)
御迷惑
(
ごめいわく
)
で
御座
(
ござ
)
んしてしよ、もう
話
(
はな
)
しはやめまする、
御機嫌
(
ごきげん
)
に
障
(
さわ
)
つたらばゆるして
下
(
くだ
)
され、
誰
(
た
)
れか
呼
(
よ
)
んで
陽氣
(
ようき
)
にしませうかと
問
(
と
)
へば、いや
遠慮
(
ゑんりよ
)
は
無沙汰
(
ぶさた
)
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
そうして
苦
(
にが
)
い顔をして
塞
(
ふさ
)
いでいるのも、あまり景気のいいものでもありませんから、つい遠慮が
無沙汰
(
ぶさた
)
になりがちで、吾身で吾身が分ったような
創作家の態度
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
すっかり当て込んでいたのであったが、塚本としてもせめて慰めの言葉ぐらい、でなければ
無沙汰
(
ぶさた
)
の
詫
(
わ
)
びぐらい、云わなければならない
筈
(
はず
)
なのである。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
二三の人がその砂揚場の近くに、何か意味ありげに立って眺めている。わざわざ足を留めて、砂揚場の
空地
(
あきち
)
を眺めて、手持
無沙汰
(
ぶさた
)
らしく帰って行く人もある。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
然うして一二年苦しんでいる
中
(
うち
)
に、どうやら曲りなりにも一本立が出来るようになると、急に此前奥さんに断られた時の無念を
想出
(
おもいだ
)
して、夫からは根岸のお宅へも
無沙汰
(
ぶさた
)
になった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
その後ご
無沙汰
(
ぶさた
)
しましたが、僕は今仙台市内のある住宅街に
棲
(
す
)
んでいます。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
續
(
つゞ
)
いて
顯
(
あら
)
はれるが
例物
(
れいぶつ
)
さ、
髮
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
自慢
(
じまん
)
の
櫛卷
(
くしまき
)
で、
薄化粧
(
うすげしよう
)
のあつさり
物
(
もの
)
、
半襟
(
はんゑり
)
つきの
前
(
まへ
)
だれ
掛
(
がけ
)
とくだけて、おや
貴郎
(
あなた
)
と
言
(
い
)
ふだらうでは
無
(
な
)
いか、すると
此處
(
こゝ
)
のがでれりと
御座
(
ござ
)
つて、
久
(
ひさ
)
しう
無沙汰
(
ぶさた
)
をした
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「ご
無沙汰
(
ぶさた
)
申し上げました。いつもご健勝で
祝着
(
しゅうじゃく
)
に存じあげます」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
無
常用漢字
小4
部首:⽕
12画
沙
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
汰
常用漢字
中学
部首:⽔
7画
“無沙汰”で始まる語句
無沙汰見舞