有縁うえん)” の例文
いや、そのほか、三州知多の吉良、仁木にっき斯波しば、一色、今川など、足利支流の族党たちの家々からも、名代、あるいは有縁うえんの者が
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むすぶ早玉はやたまの両所権現、各々その機に従って有縁うえんの衆生を導き、無縁の群類を救わんため七宝に飾られたる極楽の光を捨て、六道三有ろくどうさんうの煩悩のちりにまじわり給え。
それと同じ事で、仮りにも俳句という名前をきいたか、もしくは俳句というものを一句でも二句でも見たか、そういう人はすでに俳句に対して有縁うえんの衆生である。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
ホンの少しばかりつとめますもの故に、この近江の国の竹生島は浅からぬ有縁うえんの地なのでございます……
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多武峰とうのみねの増賀上人、横川よかわ源信げんしん僧都そうず、皆いずれも当時の高僧で、しかも保胤には有縁うえんの人であったし、其他にも然るべき人で得度させて呉れる者は沢山有ったろうが
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私に取って已み難き要求なる個性の表現の為めに、あらゆる有縁うえんの個性と私のそれとを結び付けようとするきびしい欲求の為めに、私はえて私から出発して歩み出して行こう。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
長老以下東堂西堂あるいは老若ろうにゃく沙弥喝食しゃみかっしきの末々まで、多くは坂下さかもと山上やまのうえ有縁うえん辿たどって難を避けておられる模様でございましたので、その御在所御在所も随分と探ねてまわりました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
此れからはあの御坊の弟子にもなって、有縁うえんの人々の後世ごせ専一と祈ろうよ……
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
風体ふうていによりて夫々それ/″\の身の上を推測おしはかるに、れいるがごとくなればこゝろはなはいそがはしけれど南無なむ大慈たいじ大悲たいひのこれほどなる消遣なぐさみのありとはおぼえず無縁むえん有縁うえんの物語を作りひとひそかにほゝゑまれたる事にそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
警視庁は廃寺等のために墓碣ぼけつを搬出するときには警官を立ち会わせる。しかしそれは有縁うえんのものに限るので、無縁のものはどこの共同墓地に改葬したということを届けでさせるにとどまるそうである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
冬の日も有縁うえんのひとかまうづらしまれまれながらあぜつたふ見ゆ
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「一切有縁うえん放下ほうげして、八方空」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ただひとつ、願望として欠けているのは、わが家から有縁うえんの一僧も寺籍に加わっていないことだけです。どうでしょうな、魯達どの
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、すべてのものは、そう不信を頭において、見くびりを鼻の先へぶらさげてかかった日にはたまらない、せっかくの有縁うえんのものをも、無縁の里へ追いやってしまう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
長老以下東堂西堂あるひは老若ろうにゃく沙弥喝食しゃみかっしきの末々まで、多くは坂下さかもと山上やまのうえ有縁うえん辿たどつて難を避けてをられる模様でございましたので、その御在所御在所も随分と探ねてまはりました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
お定め成れたならはゞかりながら宜敷よろしく御座りませうと云に重四郎さればで御座る世間せけんを渡り歩行あるく倦果あきはてたれども差當り未だ有縁うえんの地もないと見えてかく歩行あるきます何卒どうぞ五十か七十の敷金しききんでも致して何樣どのやうな所でも身を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その寺に有縁うえんな、石屋、花屋、塔婆屋とうばやなどの俗家が数戸たちならんでいる所は、商売がら宵のうちから一軒も戸が開いている家はない。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その辺でかたきの当りがついたのか。松里村には名刹めいさつ恵林寺えりんじがあって、そこは兵馬に有縁うえんの地。
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
見物のなかには、有縁うえんの男女も多かったことだろう。涙をしばたたく顔、嗚咽おえつする姿、群集の表情は複雑で、一がいには、言いきれない。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「別段、わたしの手がきれいな手でも、汚れない手でもありませんが——この場合、ほかに有縁うえんの人もございませんから、わたしが導師の役をつとめます、お雪ちゃん、たきぎを集めて下さい」
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これなどは“忘れ残り”を書いた為に教えられた一つである。まことに、どこに有縁うえんの人があるやら、この人生はわからない。
けれど、義兄あにの上杉憲房はじめ、義姉あねの清子につながる足利兄弟、その有縁うえんなど、家垣のすべては名だたる武族のみである。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大村由己はまもなく、故信長の葬儀を紫野に執行のため、織田有縁うえんの近親や諸州の遺臣に、その期日参列の場を報ずる会状の代筆に多忙を極めた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのほか、水仕みずしや女童の多くも、ちりぢり泣く泣く、各〻の親もとや有縁うえんをたよって、逃げのびていたものとみえる。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
紀州根来衆ねごろしゅう、北越の佐々さっさ、関東一円も当方に加担かたん呼応あるべく、織田有縁うえんの諸侯、池田、蒲生がもうなどの参加も疑いない。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、男は抵抗するでもなく、地にまみれながらも、何か思いつめた形相ぎょうそうで訴えていた。群集の耳にはよく聞きとれないが、俊基とは有縁うえんの者らしく
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ところで、昨夜来、ずいぶん足利殿有縁うえんの武士が、近郡からお供にまいったと聞くが、いま御人数はどれほどぞ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善信はまだ年も若く、年来、そちとは有縁うえんの間がら、また、師と頼んでわしにもまさる人物であるゆえ、善信について、向後こうごの導きと教えをうけたがよい
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元々は一院の尼寺に附属して尼衆や後家ばかりの住んでいる所だったが、いまはそんな風儀にかまいなく疎開の男女がそれぞれ有縁うえんの軒に込み入っていた。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「六波羅の内で、尊氏が、父貞氏の法要をり行い、足利有縁うえんの武士をひろく招いたのだということですが」
前に保元ほうげんの乱の後、敗れた敵方の者を、日頃の悩みにまかせ、おいも若きも、敵に有縁うえんの者とみれば、仮借かしゃくもあわれもなく斬殺した信西どのの終りはどうでしたか。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あっ。では其女そなたは……ここの土中に葬られている大機という者と……何か有縁うえんのあいだがらだの」
柳生月影抄 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かわってそれらの有縁うえんいて、秀吉の麾下きかにまとめたのも、専ら官兵衛の働きにあったことなので
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし伝教でんぎょう以来の宝塔仏舎ぶっしゃ灰燼かいじんとされ、万を数える師弟骨肉を殺戮さつりくされた衆徒や有縁うえんの者どもが、何で、まだ生々しい当年のうらみを、心から忘れておりましょうか
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
京都みやこへ出た折は、一度訪ねて、祖先の供養を営んだことがある、とか聞いてもいたし——またそんな古いことが知れないまでも、そういう有縁うえんの地に立って、時には
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御仏みほとけが、それを救うてくださるのだ。有縁うえんの山だ」と、彼は踏みしめる雪に感激をおぼえた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じゃが仏者には仏者の致し方——考え方というものがのうてはならぬ。当泉岳禅寺はいう迄もなく浅野家代々の菩提所、かかる時こそ、有縁うえんひさしとならねばなりますまい。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「思い寄りはございませぬが、きょうの御法要の先を慕って、ここへ来てお待ちになっているからには、やはり生前、尊氏さまに、何か有縁うえんのお方たちではありますまいか」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一つの供養塔を建立こんりゅうした奇特な長者が、一族の者や朝野の貴顕を招いて、その棟上むねあげの式を行い、それを見ようと集まった有縁うえんの人々やこの界隈かいわいに住む部落の貧民たちには
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
千寿王の参陣は、よろこばしい。新田、足利、両源氏の双璧そうへきが揃うことだ。名分も一ばい大きく聞え、足利有縁うえんの武士など、こぞッて寄って来るだろう。かたがた高氏の一男を
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「討死したり自害したり、有縁うえんの者、ひとりも生きたという名は見えませぬ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
歿後三百年の後にもなおまだそういう有縁うえんがあったり、余風を慕って訪れる幾多の道友や知己を持つ武蔵は、それも彼が虚空こくうに遺した心業の威徳とはいえ、もってめいすべきではあるまいか。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとつには、ここは洛内外らくないがいの関門でもあるから、さいごのお別れを——と念ずる有縁うえんの人々が、馬、車を立て並べ、笠、被衣かつぎ、頭巾など忍び姿を群集にまぎらせて、待ちかまえていたことでもあろう。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのときすでに平和の民、南河内の一族有縁うえんの女子供にいたるまでの運命はこの正成がごう輪廻りんねに巻きこんでいたものだった。長としてのその原罪を、彼はみずからの性格のためにごまかしきれない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「む、ちと有縁うえんの者だ。すぐこれへつれて来い」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いくたの有縁うえん無縁の霊
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)