“被衣”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
かつぎ66.3%
かずき20.5%
かずぎ2.4%
かづき2.4%
ひふ2.4%
ヴヱール1.2%
かづぎ1.2%
かっぱ1.2%
かつき1.2%
ひい1.2%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
練り絹の裾だけに、堂や塔や伽藍や、武器だの鳥獣だのの刺繍をしている、白の被衣かつぎめいた長いきれを、頭からなだらかに冠っていた。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
想うに形は遠く被衣かずきや打掛けに起源を有つものでしょう。断ち方はほとんど能衣裳と変る所がありません。帯を用いはしないのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ふと、暗がりの嗚咽おえつが耳にふれたのであろう、被衣かずぎのひさしを向けて、弱々と近づいて来ながら——
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さながらいし葬式女はうりめの、たゆげに被衣かづき引延ひきはへて
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
そんな日の午前あさ、紫の竜紋りゅうもんあわせ被衣ひふを脱いで、茶筌ちゃせんのさきを二ツに割っただけの、鬘下地かつらしたじった、面長おもながな、下ぶくれの、品の好い彼女は、好い恰好かっこうをした、高い鼻をうつむけて
市川九女八 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
そこに——敷物の上に——私の臆説が明らかにうそだと分る物が見えたのです——上から下迄眞二つに裂けた被衣ヴヱールが!
鈍色にびいろ被衣かづぎぞたゆげに
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
男は鍔広つばひろ帽子を眼深にかぶり上衣の襟を深く立てて、女は長い睫毛の真黒な眼だけを残してすっぽりと被衣かっぱを被っている。二人共如何にも世を忍ぶ風情である。
薔薇の女 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
(雨月は浜辺にひざまずき、数珠じゅずを繰りつつ、海にむかって回向す。官女玉虫、廿歳、下髪さげがみ被衣かつきをかぶりて出で、松の木かげに立ちて窺いいるうちに、雨月は回向を終りて起たんとす。)
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
青い草の萌える、満ちた川水の流れる、霞の被衣ひいのやうにほのかに靡く春に——。桃の花の白いのが、春の日影の中にくつきりと出てゐるさまは何とも言はれなかつた。
不思議な鳥 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)