斯様こん)” の例文
旧字:斯樣
貴方あんたは番頭さんだから、斯様こんな者を置いちゃ為にならねえから追出してしまった方がいゝなんて、旦那に意地を附けねえで下せいよ
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
男は男で、ひと斯様こんなことには取合いたがらぬものである。匡衡は一応はただ其儘そのままに聞流そうとした。しかし右衛門は巧みに物語った。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
旅人は斯様こんな山中にどうして斯様こんな女がいるかと怪しみながら傍へ行こうとすると蔦葛つたかずらや、いばらに衣のからまって、容易に行くことが出来ず
森の妖姫 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この女に溺れてしまって斯様こんな眼に会わされるのが気持よく感ずる迄に堕落してしまったんだ。けれども此女こいつはそれで満足出来なくなった。
あやかしの鼓 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「お前なんか、何を言っているか分りゃしない。じゃ向の言うように、一緒になっていたら好いじゃないか。何も斯様こんな処にいないでも。」
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
対手が黙つてしまつたので、丑松もそれぎり斯様こんな話をしなかつた。文平はまた何時までも心の激昂をおさへきれないといふ様子。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
甲州玉蜀黍とうもろこしをもぎ、たり焼いたりして食う。世の中に斯様こんなうまいものがあるかと思う。田園生活も此では中々やめられぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一方吾々下飯台の方は、幾月にも斯様こんなお手柔てやわらかなこきつかわれ方に遭遇でくわさないので、かえって拍子抜がして、変てこだがさすがに嬉しさは顔やこなしに隠されぬ。
監獄部屋 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
全体ぜんたいだれに頼まれた訳でもなく、たれめてくれる訳でもなく、何を苦しんで斯様こんな事をするのか、と内々ない/\愚痴ぐちをこぼしつゝ、必要に迫られては渋面じふめんつくつて朝々あさ/\かよふ。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
斯様こんな話を自動車の上でしながら帰途はセエヌ河の右岸に沿ふて夜のの美しい巴里パリイの街へはひつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そりや僕も、おやぢすねを食ひ荒して、斯様こん探偵にまで成り下つたんだから、随分惨酷ざんこくなことも平気でつて来たんですが、——篠田には実に驚いたのです、社会党なんぞ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
斯様こんな若殿原に茶にされてたまるもんかい。第一、俺がいてゐる。俺が中々承知が出来ねエや。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
斯様こんしつに、一人で夜遅く寝ていたら、さぞ物凄い事もあるだろう」と訊ねると
死体室 (新字新仮名) / 岩村透(著)
合せが頑固ですと、斯様こんな失敗を
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
おれうちで奉公に置いてやろうが、斯様こんな断末場に成ると死ぬ気にもなるもんだが、人間と云うものは少しほとぼりがぬけると、苦しい事を
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日本国はたとえば主人が無くて雇人が乱暴する家の様だ。邦家千年の為にはかる主脳と云うものがあるならば、斯様こんな馬鹿げた仕打はせまい。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
奈何どうして斯様こんなところへお志保が尋ねて来たらう。と丑松は不思議に考へないでもなかつた。しかし其疑惑うたがひは直にけた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
斯様こんなことを言った。私に字を書かして見て何うするつもりかあなたの心は分っています、なんて自惚うぬぼれも強い女だった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
然したちまち思返して、運は何様な面をしておれの前に出て来るか知らぬが、おれは斯様こんな面をして運に見せてれ、とにったりとした笑い顔をつくった。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
二郎は心のうちで、どうして姉が斯様こんな山道をくわしくしっていようか……斯様なに暗いのにどうして斯様なにみちが分るだろうかといぶかしがりながらるいていた。
稚子ヶ淵 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さて、中日の十四日の勘定前だから、小遣銭が、とて逼迫ひっぱくで、活動へも行かれぬ。斯様こんな時には、辰公はいつも、通りのラジオ屋の前へ、演芸放送の立聴きと出掛ける。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
実業家といふと聞えが好いが近頃の奴は羽織ゴロの方に近い。立派な新教育を受けた若い連中てあひまでが斯様こんな怪しからない所為まねをしたがるから困る。例へば商業学校、あれが少しも役に立ちませんナ。
青年実業家 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
かね「居るとこが知れてるくらいなら斯様こんなに心配はしやアしない、おふざけでないよ、私もお前のような人のそばには居られないよ」
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夕食の席で、民やが斯様こんな話をした。今日きょう午後猫をさがして居ると、八幡下で鴫田しぎたの婆さんと辰さんとこの婆さんと話して居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし私は斯の考への間違つて居ることを悟つた。私の教員生活も久しいものだ。斯様こんな風にしてずる/\に暮して行く月日には全く果しが無い。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
えゝ酒乱なの、だから私、斯様こんな処にいても、酒を飲む人は嫌い。……湯島天神に家を持っていたんですが、私、一と頃生傷が絶えたことがなかった。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
勿論もちろん筋の大体は違っているようだけれど、やはり斯様こんな老人が出て来るように覚えている。こう思って、彼は、老婆を眺めた。燈火の光りが当って老婆の白い頭髪は銀のように輝いている。
薔薇と巫女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
蟠「まったくお町に相違ない、相違ないが、うして斯様こんな山奥へ来てるか、それが分らぬ、併し筆蹟と云い顔形かおかたちといい、確かにお町に相違ない」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
至極真面目で、斯様こんなことを言出した。この『昼寝を為ることに極めてね』がひどく丑松の心を動かしたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さぞ困苦艱難こんくかんなんしたであろう、この文治もの、そちに劣らぬ難儀はしたが、天日てんぴに消ゆる日向ひなたの雪同前、胸も晴々はれ/″\したわい、おゝ斯様こんな悦ばしい事は……
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斯様こんなことを話したら、人は笑ふだらう。実際私の始めたことは斯ういふ不思議な性質のものだ。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
右内は如何いか御運ごうんが悪いとて、八百石取のお身の上が、人も通わぬ山中さんちゅう斯様こん茅屋あばらやすまっておいでになるのか、お情ないと気の毒そうに上って来ました。
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斯様こんなことを立話して、姉妹きやうだいの娘と一緒に笑つて、復た二階の方へ相談に上つて行つた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
數「お前のお蔭でわし斯様こんな面白い事に逢ったのは初めてだ、実にたまらんな、た其のうち来たいものだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
叔父さんは斯様こん串談じやうだんを言ふかと思ふと、急に調子を変へてお節の方へ切込んで来た。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
國「まアうしてお二人が斯様こんな処に、夢じゃアありますまいなア、わっちやア嬉しくってたまらねえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斯様こんな暑い日によくそれでも出掛けて行つたなあ。」と言つて、叔父さんは半ば独語ひとりごとのやうに、「お墓参りには叔父さんもしばらく行かないナ……」しまひに叔父さんは溜息をいた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
浪「御勘弁じゃアないよ、呆れかえって物が云えないよ、斯様こんなお多福でも亭主のあるものにんな馬鹿な事をされちゃア亭主に済まねえ、おめえうちへ行くから一緒に行きねえ」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それほど心の美しい人でも、斯様こんな療養地へ来て居る悲しさには、親しい友達にまで気をつかつて、健康ぢやうぶな人の知らないところに苦労すると見える。猶、聞けば、その男の客は斯様こんな話もする。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
何ゆえ長助が斯様こんなことを云うのか分りませんでしたが、の通り検めたのを毀したと云うのは変だなと考えて、よう/\思い当りましたのは、先達せんだっ愛想尽あいそづかしを云った恨みが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
斯様こんな話をするうちに、内儀かみさんの尖つた頬にはめづらしく血の気が上つて来た。その紅味が反つて病的にも見えた。内儀かみさんは骨と皮ばかりの瘠せ細つた両手を掛蒲団の上に力なげに載せて
死の床 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
幸兵衛は其の事が知れては身の上と思ったと見え、自分を気違だのかたりだのとのゝしりこづきまわして、お柳の手を取り、逃帰ったが、斯様こんな人から、一文半銭たゞ貰ういわれがないから
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
夫人は海岸の方から斯様こんなことまでも考へて帰つて来た。
灯火 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
村「かれが払い物だと云って小袖こそでを二枚持ってまいりましたから、たけは何うかと存じまして、改める積りで解きましたところが、貴方えりの中から斯様こんな手紙が出ました、御覧遊ばせ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
なんで困る、君は今川口町四十八番地へあの位な構えをして、其の上春見と人にも知られるような身代になりながら、僕は斯様こん不体裁ふていさいだ、身装みなりが出来るくらいなら君の処へ無心にはかんが
それから種々いろんな面倒が起るかも知れないから、何処までも他人で居て、子のようにしようと思うからの事だ……おゝ寒い、斯様こんな所で云合ったッて仕方がない、速く帰ってゆっくり相談をしよう
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何にしても何処こゝに居ては事面倒だから、至急前橋か高崎までさがるが、貴公此の女を見捨てずに生涯女房にして遣んなさい……またお前も治平殿方へ嫁付かたづいたら、もう斯様こんな浮気をちゃアならんぜ
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
松「ウン斯様こんな書付じゃア何うだえ」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)