たゆ)” の例文
今更ここに言ふをもちゐないことではあるが、そのたゆみ易き句法、素直に自由な格調、從つてこれは今迄にたぐひのなかつた新聲である。
新しき声 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
宇宙に関する吾等の知識を増すだけの目的でこんな面倒な仕事をたゆまずに続けている学者の熱心を多とすべきものではあるまいか。
天河と星の数 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
むるとも、屈せずたゆまず、ついの勝利をはかるこそまことの大将とは申すべし、はやく本城へ退きたまえ、吉信しんがりをつかまつる
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
熱心な信仰家の持つ謙遜な忍耐、あのピルグリム・プログレスの巡礼の持つ隠忍にしてたゆまぬ努力の精神、それに私は感服する。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
しかしまた知っていた、下界の人々に天の光明を語ってきかせる歌をさえずりながら、火の中へとたゆまずにふたたびのぼってゆくことを。
たゆむとも折るべからざる堅忍の気は、沈鬱せる顔色がんしよくの表に動けども、かつて宮を見しやうの優き光は再びそのまなこに輝かずなりぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
百折ひゃくせつたゆまず、対毛利家と抗争をしつづけて来た彼が——追い腹でも切るかと思いのほか、案に相違した行動に出たことである。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
初めの中三日位は随分辛抱して皆やるけれども十日廿日となるとたゆんで来るが、それを奮張ってやるのが意志の修養である。
教育家の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は実に他の一の標準とすべきものゝ如く、誠心にして忠実、我と如何なる運命をも共にしてがうまずたゆまざるの熱愛を有すればなり、と。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
それでもかまはずまずたゆまずつづけるうちある日彼は虱のやうにへばりついてる席をはなれひよこひよことそばへきてれいの舌たらずみたいに
銀の匙 (新字旧仮名) / 中勘助(著)
佐保子が永年の間いろいろの困難や苦痛と黙って闘いつつ、たゆまず芸術をみがいて行こうとする努力の姿は、伸子にとって少なからず薬であった。
伸子 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
ああこれこそ、我が母君……とすがり寄れば、乳房に重く、胸にかろく、手に柔かくかいなたゆく、女は我を忘れて、抱く——
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
或時は恐怖の念と戦いこれを克服しつつ、或時は驚異におどり立つ心に胸の高鳴りを感じつつ、自ら努力してたゆまざる登高の歩みを続けなければならない
山の魅力 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
それでも屈せずたゆまぬ勉強によって福岡地方で押しも押されもせぬ師家になられた事実が、同時に有名であった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
しかし彼はいかなるものの前にも退かずたゆまなかった。やむを得ざる場合にはいかなる難事をも甘んじて受けた。
倦まずたゆまず働くうちにだんだん仕事に馴れ、いよいよ熱を加えて来ると普通の人の三倍くらいの働きをして、とうとう古参の者を凌駕するに至りましたが
父にそむかず、師にそむかず、天にがっして人にがっせず、道に同じゅうして時に同じゅうせず、凛々烈々りんりんれつれつとして、屈せずたゆまず、苦節伯夷はくいを慕わんとす。壮なるかな
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
しりにはずみつけてスプリングぐいぐいたゆましたりしながら、しばらくおもての海のけしき見ておられました。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だから、この世相風俗の観察も、矢張倦まず、たゆまず、一生やる気で、努力するより他に仕方がない。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
それはいかにも長い軌道の旅を過して来たものの、まずたゆまずといふやうな無関心を保つてゐた。
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
一日、二日、三日、市九郎の努力は間断なく続いた。旅人は、そのそばを通るたびに、嘲笑の声を送った。が、市九郎の心は、そのために須臾しゅゆたゆむことはなかった。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
唯其の身の濡衣を乾し度いばかりに、自ら密旨と称して命がけの誓いを立て、屈せずたゆまず只管に自分を苦しめ、ヤッと其の密旨の届く可き間際まで漕ぎ附けたのに
幽霊塔 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
呼戻よびもどし下されたしそれのみ願ひ上まする夫についても呉々くれ/″\も御辛抱こそ肝要かんえうなれと猶もたゆまぬ忠義の久八六右衞門も一伍一什いちぶしじふを聞居たりしか久八に向ひ其方が五十兩の大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それ故に直接しおをふくんだ潮風を受けるために多少の風害はあるとしても、農民達はたゆまざる努力に依って、年々、大根、いもねぎなどの野菜類はもとより、無花果いちじく枇杷びわなし
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
それにその時は、毎夜戒厳令かいげんれいのような大規模の非常線が張りつめられて、連中の捜査に疲れた警官もまずたゆまず必死の努力を継続した。不審訊問はだれかれの差別なく投げられた。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
あの、華やかなスポットライトに浮び出た彼女の厚いドーラン化粧の下にも、その焦燥が痛々しくうかがわれるではありませんか。私はその気持を、ネネのたゆまぬ向上心だと思って愛しました。
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
その結果一時、健康を害して重患に悩んだにもかかわらず、たゆまず屈せず、ついに一旦その目的を達したのであるが、夫人の死後、如何いかなる故か、折角の大研究を弊履へいりの如く捨てて顧みなくなった。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
発行するや最初は何事も唯々諾々いいだくだく主筆のいふ処に従ふといへども号を追ふに従つてあたかも女房の小うるさく物をねだるが如く機を見折を窺ひまずたゆまず内容を俗にして利を得ん事のみ図る。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
我々はすべからくこの希望を抱いて、まずたゆまず奮励努力ふんれいどりょくすべきである。
世界平和の趨勢 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
それからそれを始めてからずつとやり通したたゆまぬ勤勉さ、その困難を切り拔けたあなたのさかんな精力と他からわづらはされぬ氣質——それ等の中に僕は、僕が求めてゐる性格の總和を認めたのです。
あくどしや少し恋しとなす人をたゆまずねず思ふと云ひぬ
舞姫 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
「一事が万事さ。たゆまずまず、結局目的を達する」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
わななきたゆむ。
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
戸叩く音はのちたゆまず響きたりしが、直行の裏口より出でてうかがひける時は、風吹荒ふきすさかどの梅の飛雪ひせつの如く乱点して、燈火のほのかに照す処その影は見えざるなりき。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
草刈等はなおまず、怠らず、たゆまず、ここかしこともとむれども、金属は釘のおれ鉄葉ブリキはしもあらざりき。
金時計 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
困苦にたゆまず知己に酬いて遂に仕遂げし十兵衞が頼もしさ、おもしろくまた美はしき奇因縁なり妙因縁なり、天の成せしか人の成せし将又諸天善神の蔭にて操り玉ひし歟
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
どんな困難にであってもたゆまぬ人間となれるのです、おわかりでしょう、晋太郎
菊屋敷 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
しかも国民的自覚の大意力はつて百錬の氷鉄ひようてつの如く、発して焦天の大火焔の如く、旗裂けてひるまず、馬倒れて屈せず、剣折れてたゆまず、砲弾と共に躍進して遂に随所に凱歌を奏し得たり。
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
たゆまず、セッセと鍬を打ち振て行くところを見ますと、正木博士の発見にかかる、心理遺伝の実験が、如何に残忍、冷厳なものであるかという事が、あらかた、お解りになるで御座いましょう。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
したゝめ成れしやと四邊あたりを見れば一通の書置かきおきあり是書置は何事ぞとふう押切おしきつよみ下し這はそも狂氣きやうきなされしか養家やうか實家じつか親御達おやごたち其おなげきは如何成ん夫を不孝とはおぼさずやとたゆまぬ異見に千太郎も今は思ひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし、それはぢき打克つて進むことが出来るからたゆまずにやる。
小説新論 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
と僕は急がずたゆまずやることにした。
合縁奇縁 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
たゆまずば、常にいくさの勝利者なるぞ。
飽かず、まず、たゆまないで、客に接して、いずれもをして随喜渇仰せしむる妙を得ていて、加うるにその目がまた古今の能弁であることは、ここに一目見て主税も知った。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
困苦にたゆまず知己にむくいてついにし遂げし十兵衛が頼もしさ、おもしろくまた美わしき奇因縁なり妙因縁なり、天のなせしか人のなせしかはたまた諸天善神のかげにて操りたまいしか
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一木一草といえども無用に存在するものではない、先人は水面に映る月影を見て道を悟ったとも云う、この謙虚な、たゆまざる追求の心が無くては、百年の修業も終りを完うすることはできない。
内蔵允留守 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
無感覺に投げ出した砂山の足を、浪は白齒をむいてたゆまず噛んで居る。幾何いくら噛まれても、砂山は痛いとも云はぬ、動きもせぬ。痛いとも云はず、動きもせぬが、浪は矢張根氣よく撓まず噛んで懸る。
漂泊 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
全くに暮果くれはてたり然ども宵月の時分なれば少しもたゆまず何處迄もと追行ども更に駕籠の見えざるのみかとはんと思ふ人にもたえて逢ざれば若此儘尋ね得ずばお花は如何に成やらんと案事あんじる程猶胸安からず暫しも猶豫いうよならざれば足に任せて追程に何時いつしか廣き野中へ出みち幾筋いくすぢとなく有ければ何に行て能事よきことかと定め兼四方を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
一家惣領そうりょうの末であった小山小四郎が田原藤太相伝のを奉りしより其れに改めた三左靹絵ひだりどもえの紋の旗を吹靡ふきなびかせ、凜々りんりんたる意気、堂々たる威風、はだえたゆまず、目まじろがず、佐沼の城を心当に進み行く
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)