そく)” の例文
日露戦争の当時、人のすすめに応じて、株に手を出して全く遣りそくなってから、いさぎよく祖先の地を売り払って、北海道へ渡ったのである。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「面目次第も無いことさ。三年ぜんだ、やっぱりこの土地で、鉄道往生をしそくなった、その時なんです。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
わたくしが言いそくなったんですから、今日こんちは私が散財致して旦那に御迷惑は掛けませんが、誰だッて云うじゃア有りませんか、当然あたりまえの洒落で……サア若衆さん、わっしが悪かった
「また、笹子峠のようにそくなって泣面なきつらをかかねえものだ」
赤シャツは図太くて胡魔化すつもりか、気が弱くて名乗りそくなったのかしら。ところが狭くて困ってるのは、おればかりではなかった。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わっちどもはい話がえんで、火事のあった時に屋根屋のとくの野郎め、路地を飛越しそくなやアがって、どんと下へ落ると持出した荷の上へ尻餅をき、睾丸きんたまを打ち、目をまわし
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一度くじを引きそくなったが最後、もう浮ぶ瀬はないという非道ひどい目に会うからではなくって、どっちに転んでも大した影響が起らないため
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
婆「はい御免なせえ、御無沙汰アして何時いつも御繁昌と聞きましたが、文吉もあがらんではならねえてえ云いますが、秋口は用が多いでめえそくなって済まねえてえ噂ばかりで、おめえさんも達者で」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
二重ふたえに細い咽喉のどを巻いている胞を、あの細い所を通す時に外しそくなったので、小児こどもはぐっと気管をめられて窒息してしまったのである。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二重ふたへほそ咽喉のどいてゐるえなを、あのほそところとほときはづそくなつたので、小兒こどもはぐつと氣管きくわんめられて窒息ちつそくして仕舞しまつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
こんな点にかけると、すこぶる冒険的なところのある彼女は、万一やりそくなったあかつきに、この場合から起り得る危険を知らないではなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
汽車の中で炭をいてそくなったり、貨車へ乗って、カンテラをけて用を足そうとすると、そのカンテラがゆすぶれてすぐ消えてしまったり
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも判然はっきりとは降っていない。雲の濃いのが糸になりそくなって、なっただけが、細く地へ落ちる気色けしきだ。だからむやみに濛々もうもうとはしていない。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「じゃ、買って来なくっても好かったのに。つまらないわ、回りみちをして。御負おまけに雨に降られそくなって、息を切らして」
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けれども別段に目的めあてもない歩き方だから、顔の先一間四方がぼうとして何だか焼きそくなった写真のように曇っている。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この小僧なんかやっぱり子供の時に聞いた、山から小僧が飛んで来たがそくなったところくらいだろう。それ以上は余計な事だから考えずに置く。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御米はまたやりそくなったとは思ったが、自分の粗忽そこつを面目ながって、宗助にはわざと何事も語らずにその場を通した。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ぢや、つてなくつてもかつたのに。つまらないわ、まはみちをして。御まけあめられそくなつて、いきらして」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
けれどもお延の疑いをくには充分であった。すでに疑われるだけの弱味をもっている彼は、やりそくなったと思った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「軍人がいくさで死ぬのは当然の事である。死ぬのは名誉である。ある点から云えば生きて本国に帰るのは死ぬべきところを死にそくなったようなものだ」
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御米およねはまたそくなつたとはおもつたが、自分じぶん粗忽そこつ面目めんぼくながつて、宗助そうすけにはわざと何事なにごとかたらずに其場そのばとほした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うも」とくびげたが、「大抵大丈夫だらうと思つてゐたんだがな。そくなつた。もつと此男このをとこが大分運動をしてゐると云ふはなしいた事もあるが」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
鏡に映るわが表情のうちには、無論はかないと云う心持もあったが、そくなったと云うはじも少しは交っていた。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
どうしたつて僕が責任をあきらかにしなくつちや。事がうまつて、知らんかほをしてゐるのは、心持がいが、そくなつてだまつてゐるのは不愉快でたまらない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いつもなら手帳のーと印気いんき壺を以て、八番の教室に這入る時分である。一二時間の講義位聴きそくなつても構はないと云ふ気で、真直ますぐに青山内科の玄関迄乗り付けた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「綿はどうせ——が価だから仕方がない。でもこれを買うために電車に乗りそくなってしまって……」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
高等學校かうとうがくかうちがつてゐたけれども、講義かうぎのときよく隣合となりあはせにならんで、時々とき/″\そくなつたところなどあとから質問しつもんするので、くちしたのがもとになつて、つい懇意こんいになつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
高等学校は違っていたけれども、講義のときよく隣合せに並んで、時々聞きそくなった所などを後から質問するので、口をき出したのが元になって、つい懇意になった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
机上に原稿紙をべた彼は、一時間ほど呻吟しんぎんしてようやく二三枚黒くしたが、やがて打ちやるように筆をいた。窓の外には落ちそくなった一枚のきりの葉が淋しく残っている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
暴風雨になろうとして、なりそくねた波瀾はらんはようやく収まった。けれども事前じぜんの夫婦は、もう事後じごの夫婦ではなかった。彼らはいつの間にかわれ知らず相互の関係を変えていた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あるくのは、真平まっぴらだ。これからすぐ電車へ乗って帰えらないと午食ひるめしを食いそくなう」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うまく行けば結構だが、そくなへば益三千代の迷惑になるばかりだとは代助も承知してゐたので、強ひて左様さうしやうとも主張しかねた。三千代は又立つてつぎから一封いつぷうの書状をつてた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うまく行けば結構だが、そくなえばますます三千代の迷惑になるばかりだとは代助も承知していたので、強いてそうしようとも主張しかねた。三千代は又立って次の間から一封の書状を持って来た。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
日露戦争の当時、人のすゝめに応じて、株に手を出して全くそくなつてから、潔よく祖先の地を売り払つて、北海道へ渡つたのである。其後そのごの消息は、代助もいま此手紙を見せられる迄一向知らなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
高柳君はやりそくなったと思う。再び出直さねばならん。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)