しょう)” の例文
紹介状もたずさえずに、取次を通じて、面会を求めるので、座敷へしょうじたら、青年は大勢いる所へ、一羽の山鳥やまどりげて這入はいって来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
柳生対馬守が、お畳奉行別所信濃守をしょうじて、種々日光御造営の相談をしているさいちゅう、取次ぎの若侍が、縁のむこうに平伏して
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何か犯罪に関係があるなと思ったので、云うがままに室内にしょうじ入れて、ドアを閉め、スチームの暖房装置に近い椅子を勧めた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
或る日、例の青年矢部が金をもらいにやってきたとき、彼はいつになく、手をとらんばかりにして矢部を室内にしょうれた。
脳の中の麗人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「お聞きの通りでござりますが、こちらから出向いたものでございましょうか、それとも、書面でもつかわして、密かにここへしょうじ寄せましょうか」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は室の中に椅子を据えて其処にしょうじた。何処か心の底に堅くなったもののあるのを自らにもおし隠すようにして。
恩人 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
女どもを出掛けさせ、慌しく一枚ありあわせの紋のついた羽織を引掛ひっかけ、胸の紐を結びもあえず、あたかいていたので、隣の上段へしょうじたのであった。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
再三辞するもきかず一室にしょうぜられた兵馬は、そこに坐って手持無沙汰てもちぶさたに待っていながら、つらつらこの家の有様を見ると、別に男の気配けはいも見えないし
二人の友人同士が非常に力をこめて接吻を交わしてから、マニーロフはお客を部屋の中へしょうじ入れた。
みんなは、H村につくと、まず小学校の一室にしょうぜられた。そこには村の青年たちばかりでなく、村長以下のあらゆる機関団体の首脳者が集まっていて、歓迎かんげいしてくれた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
わがやんごとなき父君、国王様には、只今、ながの旅路におわせど、そなた達を饗宴にしょうぜよと、わらわ御諚ごじょう下されしぞ。何じゃ、楽士共か。六絃琴ヴァイオル、また低音喇叭バッスウンを奏でてたもれ。
友人というのは、某会社ぼうかいしゃ理事りじ安藤某あんどうぼうという名刺めいしをだして、年ごろ四十五、六、洋服ようふく風采ふうさいどうどうとしたる紳士しんしであった。主人は懇切こんせつおくしょうじて、花前の一しんにつき、いもしかたりもした。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
宮瀬氏は明智探偵をイスにしょうじて、ていねいにあいさつをしたうえ、昨夜のできごとをくわしくものがたりました。
大金塊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
盆栽ぼんさいなどのえてある中庭を通り抜けてかどの一部屋へ案内されたが、水はなかなか出る様子がない。そのうち、こちらへと云ってまた二階へしょうぜられた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
奸智かんちにたけた鈴川源十郎、たちまちおさよを実の母のごとくうやまって手をついて詫びぬばかり、ただちにしょうじて小綺麗こぎれいな一をあたえ、今ではおさよ、何不自由なく
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこへ、おそく酒宴しゅえんにまねかれた、菊池半助きくちはんすけ末席まっせきにすわった。隠密おんみつのものは、ろくは高いが士格しかくとしては下輩げはいなので、めったに、こういう席にしょうじられることはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
惣太は杉板を三枚合せて綴った戸をあけて、中へ一行をしょうじ入れたが、気味の悪いことはおびただしい。
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
珠玉しゅぎょくちりばめた翡翠色ひすいいろの王座にしょうじ、若し男性用の貞操帯というものがあったなら、僕は自らそれを締めてその鍵を、呉子女王の胸に懸け、常は淡紅色たんこうしょく垂幕たれまくへだてて遙かに三拝九拝し
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は老探偵の手を取らんばかりにして、応接間にしょうじ入れ、姿なき犯人の奇怪の示威運動の次第を語った。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その門之丞は、さっき、しきりに源三郎に心を残す玄心斎、谷大八の二人とともに、どこか控えの間へしょうじ去られたきり、なんの音沙汰もない。寮の内は、森閑として
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
翌晩、父子はあらためて、武松をべつな館にしょうじた。そして夜すがらの饗宴と歓談にかした。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしは、珍客の来訪にあって、だだっ広い、合宿の舎監しゃかん居間の一室へしょうじ入れた。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
S氏は愈々ただ事ではないと、青くなって、兎も角も、有名な素人探偵を、事務室へしょうじ入れた。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
わき本陣の旅籠はたご茶碗屋のおつるは、乙女おとめごころにただ気の毒と思い、役人の手前、その場は知人のようにつくろって、往来にふんぞり返っていばっている泰軒を店へしょうじ入れたのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
客殿へしょうじると、伊勢守は、従者のうちから二人だけを伴って座敷へ通った。
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
署につくと、三人の客はあかあかと電燈のついた署長室にしょうれられたが、そこの大デスクの上には、もうちゃんと、焼きつけを終った、数枚の現場写真が待ち受けていた。
たるひろいでも、その座にしょうじて自分のつぎにすわらせる例。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
伯爵夫妻が待構まちかまえていた様に、彼をしょうれたのも道理である。
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)