)” の例文
を通じて家にはいると、三人警部と茶を飲んでおった主人は、目ざとく自分を認めた。僕がいうくやみの言葉などは耳にもはいらず。
去年 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
つうじると、田舎いなか者らしい小女こおんなの取次で、洋館の方の応接間へ案内されたが、そこには静子が、ただならぬ様子で待構えていた。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あたらずとも六分利付りつきそんなしといふやうなことが、可り空たのめなことながら、一めんさうの青木さんの氕持きもちつよげきした。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
頤紐あごひも金釦きんボタン給仕ボーイを通じさせるとはたして私の予感どおり、「唯今大使館のお客が見えているものですから、しばらくお待ちを願います」
ナリン殿下への回想 (新字新仮名) / 橘外男(著)
一市長さんがを通じてここへも現われる。源泉課税の色紙短冊を健吉画伯とすませ、早めに眠る。例の健吉氏の一筆仏画に。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
供養くよう卒塔婆そとばを寺僧にたのまむとてを通ぜしに寺僧出で来りてわが面を熟視する事良久しばらくにして、わが家小石川にありし頃の事を思起したりとて
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
張華の邸へ来ってを通じたところ、張はこれを鄭重に一間へ案内した。そして古今の経書詩文を論ずること、三日に及んだけれど、いつかな青年は屈しない。
支那の狸汁 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
それに出し抜けに、美中にありともいうべき批評の詞をあびせ掛けるとは、しからん事だと思った。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
を通ずるまでもなく挨拶あいさつに出たが、固く引きまった日に焼けた顔の色と云い、ショボショボした、人の好さそうなつきと云い、首の小さい、肩幅かたはばの広い体格と云い
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ところが社員は恐る恐るを通じて早速部屋に通され、粛々如としてうやうやしく控えてると
鴎外博士の追憶 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
しかしわざわざ尋ねて来ながら、も通ぜずに帰るのは、もちろん本望ほんもうではありません。
秋山図 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さっきからじりじりとれていた川内警部が、火のついたような声で叫んだため、なにかそれがげきとなったらしく、博士は“危険だ、みなさん外へ出てください”と追い出し
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
二、三日すると島田に頼まれた男がまたを通じて面会を求めに来た。行掛り上断る訳に行かなかった健三は、座敷へ出て差配じみたその人の前に、再びすわるべく余儀なくされた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三多摩郡さんたまごおりの吉野左衛門君の家に書生をしていた頃から『日本新聞』に投句して我ら仲間の人となったのである。余の下宿にも書生の目には珍らしい大きな菓子折を持ってを通じて来た。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
つるもつれて居る工合を見るのも何となく面白かつた。この時どやどやと人の足音がして客が来たらしい。やがてを通じて来たのは孫生、快生の二人であつた。(ツヅク)(八月二十三日)
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
を通じて斎藤の後家さんに面会すると劈頭へきとう第一に質問をした。
無系統虎列剌 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
絶対な不可侵境ふかしんきょうといわれている大奥でも、輪王寺の宮の内事にでも、かれがを通じて、質問にのぞむ場合は、これをいなむことができない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが或る朝、突然を通じたので会って見ると、斜子ななこの黒の紋付きに白ッぽい一楽いちらくのゾロリとした背の高いスッキリした下町したまち若檀那わかだんな風の男で、想像したほど忌味いやみがなかった。
斎藤緑雨 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
薄板うすいた組合くみあはせて名かた暗箱あんはこをこしらへる。内すみる。から十五錢ばかりでしかるべき焦點距離せうてんきよりを持つ虫鏡をつて來て竹つゝにはめんだのを、一方のめんにとりつける。
沼田さんは今度郷里から呼び迎えられた老人を、自宅へ案内されるために、船まで来られたのだそうだが、同じ鉄嶺丸に余の乗っている事を聞いて、わざわざを通じられたのである。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
保はかくの如くに思惟しゆいして、校長、教師に敬意を表せず、校則、課業を遵奉じゅんぽうすることをも怠り、早晩退学処分の我頭上とうじょうに落ちきたらんことを期していた。校長諸葛信澄もろくずのぶずみの家にを通ぜない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
仏は、門衛もんえいに、を通じた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ところが、彼は、お住居すまいの方へ行ってしまって、どう奥へを通じたものか、お座敷で、大先生と話しこんでいるのだ」
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
藥屋くすりやしゆ寫眞材料店しやしんざいれうてん、名かたかん板のはんダース、現像液げんぞうえきていえきさら、赤色とう、それだけは懇願こんぐわんすゑ母から金をもらつたのだつたが、むねをどらせながら、おし入へもぐりんでかん板を裝置そうちして
宋江はやがて、宏壮な一門の前に立ち、衛兵にを通じて面会を求めた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつはどれほど寫眞熱しやしんねつ戟されたか分らなかつた。
と、だまって、寺役人に、を通じた。刺とは、名刺なふだのことである。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、客のを通じる取次の者が待ち構えていていう。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
を通じると、楽翁自身が、式台へ出て来て
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
を通じて、やがて三人は奥へ通される。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
を通じて
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)