黒旋風こくせんぷう)” の例文
黒旋風こくせんぷうのようなものが、後ろの浜屋の天水桶の蔭から捲き起ったと見ると、米友の背後から、さながら鎌鼬かまいたちのように飛びついたのです。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
戴宗たいそうのお国自慢は何かとつきない。宋江そうこうもすでに微酔気分である。ひとりまだまだ飲み足らないようなのは、黒旋風こくせんぷう李逵りきだった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
池の端妙月庵を襲って、千両の祠堂金を奪い取った、凶賊黒旋風こくせんぷうの手際は、平次の想像を飛び越えて、不可能を可能にしたように見えました。
『水滸伝』中には、鶏を盗むを得意とする時遷じせんのような雑輩を除いても黒旋風こくせんぷうのような怒って乱暴するほかには取柄とりえのない愚人もあるが、八犬士は皆文武の才があって智慮分別があり過ぎる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「なにさ、男のくせに、いっそ、ちょうどいいじゃないか。飯のおかずへ、しびれ薬をしのばせて眠らせてしまえば、いくら黒旋風こくせんぷうだって」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鉄の錫杖しゃくじょうをふりまわす花和尚かおしょう魯智深ろちしん、馬上に長刀をあやつる九紋竜史進。二丁のおのをかるがるとふる黒旋風こくせんぷう李逵りき
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
「李逵のことですわい。……じつはの、かねて宋江からの密書で、このやかたの内に、呉用、雷横、黒旋風こくせんぷうの三名を泊めてやっておりましたのじゃ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
蛇、蛙、なめくぢの暗號は、地下に埋めた小判の目印めじるしに置いた、庭石の恰好で、この暗號のない金は、黒旋風こくせんぷうの辰三とお久良が、盜るに従つて費つたものでせう。
「覺えがあるやうですね。去年あたりから江戸中を荒した、黒旋風こくせんぷうとか言つた押込み、まだつかまらないやうですが、その稼ぎは、こんなことになりやしませんか」
赤色の彗星すいせいが現れたり、風もない真昼、黒旋風こくせんぷうが突然ふいて、王城の屋根望楼を飛ばしたり、五原山げんざんの山つなみに、部落数十が、一夜に地底へ埋没してしまったり——凶兆ばかり年ごとに起った。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その頃江戸中を荒した、凶賊黒旋風こくせんぷうには、さすがの銭形平次も全く手を焼いてしまいました。
黒旋風こくせんぷう、もう澤山だらう、お繩を頂戴しろツ」