黄浦江こうほこう)” の例文
Chin chin Chinaman ——私は暗い黄浦江こうほこうの水に、煙草の吸いさしを拠りこむと、ゆっくりサロンへ引き返した。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
階上にはベランダを廻らした二室があって、その一は父の書斎、一つは寝室であるが、そのいずれからもながらにして、海のような黄浦江こうほこうの両岸が一目に見渡される。
十九の秋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
えっさえっさと甕をかついで黄浦江こうほこうの中へ、どぶんどぶんと沈める競争が始まった。
わしは、バーター・システムの約を忠実に果したつもりである。質的クオリティヴのバーター・システムをね。あのインチキ・ウィスキーは悉く黄浦江こうほこうへ流してしまったよ。以後お前とは絶交ぜっこうじゃ”
僕等はもう船のの多い黄浦江こうほこうの岸を歩いていた。彼はちょっと歩みをとめ、あごで「見ろ」と云う合図あいずをした。もやの中にほのめいた水には白い小犬の死骸が一匹、ゆるい波に絶えずすられていた。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
黄浦江こうほこうは、あの広い川面かわもが、木製の寝台を浮べて一杯となり、上る船も下る船も、完全に航路を遮断しゃだんされてしまって、船会社や船長は、かんかんになって怒ったが、どうすることも出来ない。
後日の調べによると、その日のうちに、租界そかいの中だけでも、三千百四の柱時計がめちゃくちゃに解体されたそうで、そのほか黄浦江こうほこうの中へ投げこまれたものが六百何十とやらにのぼったという。