麻痺しびれ)” の例文
「苦しい! 麻痺しびれる! ……助けて助けて!」としゃがれた声で叫んだが、見る見る顔から血の気が消え、やがて延びて動かなくなった。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
翌朝あくるあさは、枕辺の障子が白み初めた許りの時に、お定が先づ目を覚ました。嗚呼東京に来たのだつけ、と思ふと、昨晩の足の麻痺しびれが思出される。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
橋の中ほどにきた時、コゼットは足が麻痺しびれたから歩きたいと言った。彼はコゼットを下におろして、またその手を引いた。
「御茶より御白湯おゆの方がすきなんですよ。父がよせばいいのに、呼ぶものですから。麻痺しびれが切れて困ったでしょう。私がおれば中途から帰してやったんですが……」
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
嗚呼東京に來たのだつけと思ふと、昨晩ゆうべの足の麻痺しびれが思出される。で、膝頭を伸ばしたりかゞめたりして見たが、もう何ともない。階下したではまだ起きた氣色けはひがない。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
源助とお吉との会話が、今度死んだ函館の伯父の事、其葬式の事、後に残つた家族共の事に移ると、石の様に堅くなつてるので、お定が足に麻痺しびれがきれて来て、膝頭がうづく。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)